あざとさが鼻につく―『127時間』

ダニー・ボイル監督の『127時間』を観た。

冷静な判断と勇気ある行動―ということになるのだろうけど。そして、ジェームズ・フランコは過酷な127時間を好演した―ということになるのだろうけど。

前作『スラムドッグ$ミリオネア』あたりで顕著だった、ダニエル・ボイルのあざとい映像や演出がどうにも鼻についてたまらなかった。生理的に嫌悪感を催させることで、視覚・聴覚では与えられない印象を刻み込もうとしているのだと思うが、個人的には限度を超えていた。

終盤ではスクリーンから目を背けたくなるような場面もあり、「ケレン味」が持ち味の監督の作品とはいえ、もう勘弁してくださいと言いたくなるほど。世の中には『(500)日のサマー』みたいな爽やかな作品もある一方で、こんなに臭いの強い映画を生み出せる才能はある意味で貴重なのかもしれない。

いや、アカデミー賞候補の常連ということなのだから、アメリカの映画人にはこういう作風こそが支持されていると言える。となると、僕の映画の好みの方が、主流から外れているという結論になりそうだ。