怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。
(『善悪の彼岸』ニーチェ)
泉水と春の兄弟が戦っているのは、まさに怪物だ。だから、彼らも怪物になることにないように気をつけなくてはいけない。深淵をのぞく時、深淵にのぞかれているのは、狂気が見え隠れする弟の春(岡田将生)よりも、むしろ徹底的に冷静沈着に見える兄の泉水(加瀬亮)方かもしれない。
重くて暗いテーマをもった原作が、ほぼ忠実に映像化されていて、観ていてどうにも息が苦しくなるほど。「最強の家族」のあり方を描いているとはいっても、いったい、誰が救われたのだろうかと考えてしまう。最終的には、この兄弟の絆に涙するべき映画なのかもしれない。
岡田将生の美しくも陰影のある演技が見所。これが、翌年の『告白』『悪人』での名助演につながったのだろうと想像される。加瀬亮や小日向文世といった日本映画に欠かせない俳優陣が良い仕事をしている。渡部篤郎も久々にキモチワルイ芝居を見せてくれた(良い意味で)。吉高由里子はいまより大分顔がすっきりしているとかいう発見もあった。
仙台の風景は、東京とは違った「のんびりとした都会」という感じだ。またいつの日か、この地から素晴らしい作品が生まれることを、僕は信じる。
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2009/10/23
- メディア: DVD
- 購入: 6人 クリック: 128回
- この商品を含むブログ (231件) を見る