シギサワカヤ絶好調〜『楽園 Le Paradis』第4号

白泉社の『楽園 Le Paradis』第4号。今回もシギサワカヤ先生による目つきの悪い表紙が目印。4ヶ月毎の発刊なので、これで一周年。

公式サイト:楽園|白泉社

心に残った作品を中心に簡単なインプレを。

心理描写が相変わらず秀逸。SEっぽい職場とかシギサワワールドだな。そして、海老沢長女vs.次女的な。百合とか関係なく、読んでいて引き込まれる。これを読めただけでも満足。

80年代の古き良き少女マンガの雰囲気は健在。往年の「ぶ〜け」とかに載っていても違和感なし。ちょっと絵柄がいまどきっぽくなったかもしれないけど、高校とか、演劇部とか、文化祭とか、なんかもう胸をしめつけられる。殺伐とした現代を忘れさせる世界。

ヲタ夫と非ヲタ妻の間の「あるある」的な小ネタ。主人公がちょっと斑目っぽいところが『げんしけん』ファンだった俺得。絵柄は以前よりもちょっとだけ繊細になっている気がする。しかし、全部で14ページ(うち書き下ろしは8ページ)というのはちょっと物足りない。

ファンタジーもの。高校の頃にこういう妄想をしたことあったなとか想い出した。この人の場合、どんなにエロな場面を書いても全然淫靡にならないし、「冷酷」とか言ってもあっけらかんとしている。シギサヤカヤの先行者だが、個人的にはまるで正反対の読後感を残す作家だと思う。

  • 黒咲錬導『kissing number problem』

相変わらず眩暈のするようなパースだが、今回初めてストーリーに共感を覚えた。そして初めてヒロインをかわいいと思った。それにしても、この人の描く女性って、痩せていて貧相なのに、脱ぐと妙に生々しいのはなぜだろう。

その他、一言コメント。

  • 沙村広明『筒井筒』…相変わらず変だ、この人。天才なんだろうけど。
  • 水谷フーカ『14歳の恋』…すっきりとした線。清潔な話。でも、もう14歳の恋愛感情を純粋に楽しめない俺がいる。というか、こういう中学生時代を過ごしたかっただけかも。
  • 宇仁田ゆみ『ノミノ』…絵にも話にももうちょっと深みがほしい。『うさぎドロップス』実写映画化でブレイク中だけど。

ってな感じか。相変わらず眼鏡率の高い雑誌だ。こうして見ると、中村明日美子の活動休止は痛いな。特典のポストカードもとりあえず今回が見納めになるのかも。