『神のみぞ知るセカイ』は神アニメ

今期アニメ『神のみぞ知るセカイ』の出来が素晴らしい。

公式サイト:神のみぞ知るセカイ アニメ公式サイト

「現実(リアル)なんてクソゲーだ」と嘆くギャルゲーおたくの主人公が、駆け出しの悪魔少女のエルシィと出会って、リアルの女性を「攻略」することに…という「少年サンデー」連載の人気作品。

何が素晴らしいといっても、監督・高柳滋仁、構成・倉田英之による軽妙でテンポのよい演出と展開。場面の切り替えで、SDキャラクターが画面をワイプするとか、コメディアニメならではの表現が小気味よい。『アマガミSS』もこのくらい間がよければいいのにと思わせるレベル。ヒロインの百面相のようなドタバタぶりも楽しい。やっぱり「サンデー」のラブコメはこうでないと。系統的には『うる星やつら』の末裔的ポジションにあるというべき。電撃ビリビリはないけれども。

そう、原作の若木民喜高橋留美子を目指して漫画家を志していたのだ。過去のインタビューでこう語っている。

「響子さんに、僕は本気で恋してましたから。」
「漫画を描くきっかけは、響子さんクローン化計画やったんですよ。それが中3くらい。」
「僕は最初、漫画家になりたいというよりかね、高橋留美子のクローンになりたかったんですよ。」

舞台設定やキャラデザインは21世紀のスタイルだが、るーみっくなサンデーDNAはこの作品に確かに受け継がれている。

あと、一人の女の子の「攻略」が終わったら次の女の子の「攻略」に行くという展開は、『アマガミSS』のアニメと似て、登場人物間の嫉妬や、主人公の葛藤というドロドロした問題を巧妙に回避している。が、その方法が「時間ループ」ではなく、「当事者の記憶消去」によってなされている。これは攻略を繰り返す中で、主人公は実はエルシィとだけ濃密な時間を重ねて記憶を共有することになる。ここがポイントだ。物語の構造上、同級生の少女達は消費されるキャラクターとなり、ともに成長を重ねるエルシィだけが主人公の伴侶となりうる。俺の悪魔がこんなに可愛いわけがない、と。

そして、アニメ版の方のキャラクターデザインの素晴らしさが、ますますエルシィの魅力を高めている。渡辺明夫(というよりも別名の「ぽよよん♥ろっく」の方が有名か)が良い仕事。絵としてもエルシィが圧倒的。もうキュン死するレベル。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』も、ヒロインをこれくらい可愛く描いてほしいと思ったり。

最後に、最近の萌えアニメでは重要な「お色気」のさじ加減も絶品。他のアニメ作品では、過激なシーンを描きながらTV放送で光や影で一部を隠して、Blu-ray・DVDで解禁するという商法が目立つ。今期作品だと『もっと To LOVEる−とらぶる−』とか『ヨスガノソラ』とか。これはやりすぎると鼻につくのだが、『神のみぞ知るセカイ』はそういう次元での勝負はしない。入浴シーンでもTVで放送できる範囲の描写にとどめている。光渡しも影渡しもなし。だがそれがいい。浅ましい商魂を感じなくていいし、作品としても品格が出てくる(キリッ)

ということで、ややべた褒め気味だが、あえて難点をいえば、OP曲の歌詞が英語というのはどうなんだろうか。まあ、でも全体の出来のよさに比べたらどうでもいいや。