静かなる狂気〜『パーマネント野ばら』

西原理恵子の原作を実写映画化した『パーマネント野ばら』を観た。以下、なるべくネタバレ回避しつつ。

パーマネント野ばら

パーマネント野ばら

一言で要約すれば、どんな境遇にあってもたくましく生きていく女性達、もちろん「恋をして」(←ココ重要)ということで、ああこれって西原イズムだよな。しかも、舞台設定がニューヨークではなくて高知になっているものの、本質的には『セックス・アンド・ザ・シティ』と同じ。と思ってググッら、主演の菅野美穂もこう語っていた。

女同士でワイワイガヤガヤ楽しくしゃべっているうちに、解決しないこともあるけど、解決することもある。それをオシャレにしたら『セックス・アンド・ザ・シティ』で、お座敷で焼酎ガブ飲みなら『野ばら』(笑)になるだけで、根本は一緒。恋に年齢は関係ないし、女はタフで強いと思いますよ。
『パーマネント野ばら』主演の菅野美穂が語る幸せのつかみ方 | ニュースウォーカー

やっぱり、菅野美穂はよく分かって演じている。素晴らしい。夏木マリや小池栄子らクセの強い女優陣が登場する中で、一見するとアピールが弱いように見えるが実際にはそうではない。終盤、池脇千鶴との濃密な対話が始まってから、菅野美穂の表情や立ち居振る舞いの一つ一つが強烈にフラッシュバックしてくる。恐ろしいほどに(この場面の池脇千鶴の演技も良い)。

菅野美穂には、夏木マリのケレン味も、小池栄子のオーバーアクションもない。いや、むしろそんなものはいらない。「何か」を宿しているように見える謎めいた瞳があるのだから。それはもしかしたら狂気なのかもしれない。しかも、静かなる狂気。8年振りの映画主演ということだが、もっとスクリーンで活躍してほしいと思わせる存在感を示した。

監督は『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で力量を示した吉田大八。今回も良い仕事をした。ともすると「イイ話」で終わってしまいそうな原作を、映画ならではの表現手法を用いて見事な劇場作品に仕立てた。冒頭はやや退屈ではあるのだが(特に男性から見ると)、終盤、一気にそれまでの構図が「騙し絵」のように反転し、観終えた後に強烈な印象を残す。ネタバレしないギリギリ限界で言えば「映画のポスターはこの作品世界をよく示している」と思う。

ということで、菅野美穂と吉田大八の仕事には引き続き注目していきたい。

カンノが、出会ったオンナたち 菅野美穂 meets 映画『パーマネント野ばら』

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