デヴィッド・リンチ的不条理世界〜『THE BOX〜運命のボタン』

奇才、としか言いようがないリチャード・ケリー監督の『THE BOX〜運命のボタン』を観た。以下ネタバレ。

キャメロン・ディアス主演」と謳われているが、マジョリティには不評となるだろうストーリー。実際、日本はもちろん米国でも興行的には大失敗となった作品。だが、個人的にはツボ入りまくり。あらすじは以下。

ある日の明け方、ノーマ(キャメロン・ディアス)とアーサー(ジェームズ・マースデン)夫妻のもとに箱が届く。箱の中には赤いボタン付きの装置が入っていた。その日の夕方、スチュワート(フランク・ランジェラ)と名乗る謎の人物がノーマを訪ね、驚くべき提案を持ちかける。

「このボタンを押せば、あなたは100万ドル(約1億円)を受け取る。ただしこの世界のどこかで、あなたの知らない誰かが死ぬ。提案を受けるかどうか、期限は24時間。他言した場合取引は無効」。ふたりは道徳的ジレンマに迷うが、目の前に1億円を見せられ、生活が苦しいこともあり、結局ボタンを押してしまう。だが、それは想像をはるかに超える事態の始まりに過ぎなかった。

この「想像をはるかに超える事態」というのが、本当に事前の想像をはるか上を行く領域。時は1976年ということで、米国の宇宙開発のピークに設定されているのがポイント。人間同士の友愛を謳った映画のように見せかけながら(いやそういう一面がこの作品にあることは否定しないけれども)、実際には異星人による地球人への実験(?)を描いたトンデモ映画。エンディングでは、誰も幸せにならないし、何も解決しない。

不条理世界に翻弄されるしかない人間の姿は、デヴィッド・リンチ作品の「悪夢」を見ているようだ。そして、身体の部分欠損への異常な固執もリンチに共通する。そういう意味では、カルト映画マニアにとっては、リチャード・ケリ監督は将来を嘱望できる存在だと言ってよい。あとは映像美がもう少しあれば…と高望みしてしまう。

蛇足。ここでのキャメロン・ディアスは、とてもシリアスで雰囲気があり、明るくてコミカルな彼女の演技を受け付けないという理由で、この作品を毛嫌いしてはもったいないと思う。少々辛口にいえば、彼女が主演ではなくても成立してしまう作品であるとは思うけれども。