マルチエンディングをアニメ化するということ〜『アマガミSS』

第4話で森島先輩ルートのクリスマスイブ、そして「10年後」でエンディング。そして、次回の第5話から薫ルート。

公式サイト:アマガミSS+ 公式ホームページ|TBSテレビ

一旦エンディングを迎えたが、次回から時間をさかのぼってループ。そして、別ルートで別エンディングへ向かうのだろう。いや、ループといっても、「同じ時間を同じように繰り返す」という『涼宮ハルヒの憂鬱』の「エンドレスエイト」的なループではなく、「同じ時間をパラレルワールドのように別の形で過ごす」という『四畳半神話大系』的なループ(ただし、『四畳半神話大系』のループが完全に「別の形で」とか「別エンディング」と言えるかどうかは微妙だし、もっと言えば「エンドレスエイト」のループも厳密には同一ではないが、ここでは捨象する)。

この『アマガミSS』のアニメの構成は「選択肢→Aルート→エンディングA→リセット→別の選択肢→Bルート→エンディングB→リセット…」というマルチエンディング。複数の「ありえた可能性」を視聴者に見せようとしている。この構造は「素人」には分かりにくいけれども、これを見ている人にはどのみち「素人」などいないだろうから大丈夫と、製作者は踏んでいるのだろう。

たとえ『アマガミ』の原作を知らなくても、「セーブして選択肢を選んでまたロードする」というゲームの文法さえ知っていれば、この作品を違和感なく鑑賞することができる。そして、ゲームのように楽しめるアニメにするには、「○○ルート→○○エンディング」を一つ選択するというよりも、このようにマルチエンディングを見せるのが一番良いということなんだろう。これによって主人公を「ハーレム化」させず、「選ばれなかったヒロイン」が生まれる悲劇を回避するという巧妙な作りになっている。

まあ、今回のようなゲーム作品のアニメ化の手法は、『Fate/stay night』のような壮大なストーリーには馴染まないかもしれないが。

アマガミSS』は演出で寒いところがあるのは気になるものの、作画は綺麗だし、声優も頑張っている感じが出ていて好感が持てる。このまま突っ走って、ギャルゲの複数ルートを見せるアニメ化の方法論を確立して欲しい。というか、『四畳半神話大系』はギャルゲと同じ方法論で作られていたんだな。森見登美彦はどう思っているんだろうか。