生きる意味、死ぬ意味〜貞本エヴァ第12巻

前巻から実に2年9ヶ月振り。もともとじっくり描く人だし、新劇場版の仕事もあるので、このペースは仕方ない。そして、内容を見れば、「待ったかいがあった」と心から思う。

新世紀エヴァンゲリオン 12 (角川コミックス・エース 12-12)

新世紀エヴァンゲリオン 12 (角川コミックス・エース 12-12)

前巻のハイライトはカヲルだったが、本巻はさまざまな人物に焦点が当たる。TV版の終盤〜映画の「Air」あたりの展開。碇ゲンドウの左手に出現した謎の目玉から強力なATフィールドが展開されるところはコミックオリジナルだけど凄い。こんだけATフィールド出せるアンタは何者?ってとこ。

「もうエヴァに乗りたくないんだ」というシンジを押し出すミサトもいい感じだが、それよりも「アスカ大復活!」なところが最高。弐号機で戦艦を持ち上げるところからエヴァシリーズと死闘を繰り広げるあたりの迫力といったら筆舌に尽くしがたい。

貞本義行のような超一流のアニメーターは、絵が動いたり、声優が話さなかったり、BGMや効果音がなかったりしても、モノクロの絵だけでもここまでの表現ができるのか。もちろん、アニメ版の記憶がオーヴァーラップしている影響もあるだろうけど、この人の場合、決して「アニメの方がいい」と思わせる部分がない。そしてそれぞれの心理描写が丁寧で、どうしてこの人がこういう行動を取るのかということをいちいち納得できる。そして、この人もアスカのこと、好きだよね、絶対。絵に愛を感じるよ…

さて、ゲンドウは自分の信念を吐露した。ミサトは命をかけて自らの使命を全うした。アスカは生きる意味を見出した。さあ、シンジはどうする? 最後にエヴァに乗ることができるのか、というところで次巻へ。次の単行本は再来年かなあ。「新劇場版・Q」の仕事もありそうだし。