彼もまた宮崎駿チルドレンの一人〜『アバター』

池袋のシネマサンシャインで『アバター(3D)』を観た。以下ネタバレ注意。

公式サイト:映画「アバター」オフィシャルサイト

世界観やストーリーは『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』に酷似していて、ジェームズ・キャメロン宮崎駿チルドレンの一人であることがはっきりと分かる。「自然」対「文明」というのは、決して「野蛮」対「先進」ではないし、前者に対して後者が優位にあるというわけではないと。このような映画がアメリカで受けるようになったというのはいかにも21世紀になったと実感させる。逆に言えば、宮崎駿がいかに先進的であったことか。

もちろん、宮崎アニメとは違い、アメリカ人の嗜好に合わせることを忘れていないのも商業的に成功した要因だろう。純粋なファンタジーではなく遠くの星の話にしてSF仕立てにしていたり、ベトナム戦争等を彷彿とさせるようなヘリや火器を登場させているところ。異星の風景、アバター、クリーチャー、戦闘用ロボットなどの仕立てはハリウッド映画的な見所だった(これ見よがしな感じがして個人的にはあまり好みではなかったが)。

それにしても、現実な自分の「生」よりもアバターの活躍する「世界」の方が充実してくるというのは、現代的なネトゲ廃人を思わせるプロットだった。そして、最後に主人公が行う選択も、ある意味で風刺が効いている。ジェームズ・キャメロンは「ラブプラス離婚」を知っていたのだろうか。でも、結局は、人間はアバターにはなれず、ときに醜くてときに辛いこの現実を生きるしかないという事実に直面する。素直に受け止めれば、この映画を観終わって劇場を出たときに暗い気持ちになる観客もいるだろう。その点では罪作りな作品だ。

ただ、映像表現の斬新さは純粋に評価できると思う。ファンタジーの世界をCGでここまで作れることが示されてしまうと、アニメの領分が狭くなってしまうのではないかと心配になる。たとえば、『サマーウォーズ』でのアバターの戦いがいかにのどかに思えることか(いや、キングカズマは嫌いじゃないけどね)。

最後に、3Dについて。シネマサンシャインの3DでXpanD方式で観たのだが、まあ期待したほどではなかった。これで300円上乗せされるというのは微妙な値段設定だと思う。「猫も杓子も3D」みたいにならないことを望むが、『ハリー・ポッター』シリーズの最終編も3Dになるらしい。はあ。