ウィルスは自己増殖を続け、僕という回路は熱を発し始めるだろう

朝、仕事場に行くと、同僚がA型インフルエンザを発症したと知らされた。3日前の夜に発熱し、翌日診療所に行ったところ、そのように診断されたということだ。これはいよいよ来たかもしれない。彼が発症するまさにその日、僕は朝から晩まで行動を共にしていたから。

夕方になる。朝からマスクを着用して過ごしていたが、気のせいか何だか熱っぽく感じる。鼻と口が塞がれて息が苦しいことによる気分のせいなのか、それともついに症状が顕在化してきたのか。もし感染していれば、ちょうど3日間。まさに潜伏期間が終わる頃だ。デスク周辺に体温計がないので何℃あるのかは判らないが、最低限の仕事の引継ぎを済ませ、仕事場を後にする。電車の中で立っているのが、何だかいつになくつらい。関節や背中がちょっと痛む。最寄駅から雨の中を歩く道のりが、いつもより長く感じる。

自宅につき体温を測る。37.7℃。これは本当に来たかもしれない。だが、行きつけの診療所はもう閉まっている時間だ。さっき買い込んだポカリスエットカロリーメイトで明日の朝まで乗り切ろう。まずは診察、検査。そしてタミフルを出してもらおう。いまならまだ在庫はあるはずだ。高熱が出る前に。ウィルスの自己増殖が僕の中でピークに達する前に―