悪役を自ら引き受けるということ〜『コードギアス 反逆のルルーシュ』

コードギアス 反逆のルルーシュ』が終わって数日経つ。物語のエンディングを反芻しながら日々を過ごす中で、どこかで見たことがあるなと引っかかってた。

もちろん『コードギアス』自体は、シェークスピアの悲劇『ハムレット』との類似を指摘できるわけだけれども(あの芝居がかったポーズや台詞を含めて)、あのルルーシュの確信犯的な悪役っぷりはあれだ、ミュージカルの『WICKED』の「悪い魔女」ことエルファバだ。

(ここから『WICKED』のネタバレを含む)

まず『WICKED』のあらすじはこんな感じ。

全寮制のシズ大学に入学したエルファバは、その緑色の肌のせいで家族やクラスメイトに疎まれていた。一方、ブロンドの髪の明るく美しいグリンダは皆の人気者。

性格も外見も全てが正反対の2人は対立していたが、次第にお互いを理解し合い友情を育んでいく。

ある時、人も動物も同じ言葉を話し、一緒に生活していた「オズ」では、動物たちが急に話せなくなるという事件が起きていた。

ずっと憧れていたオズの魔法使いが実は人間で、彼こそが自分の権力のために動物たちの言葉を奪っていた悪者だとわかったエルファバは、動物たちを開放すべくオズの魔法使いに反旗を翻す…

エルファバは持ち前の生真面目過ぎるくらいの正義感で「敵」に立ち向かうが、あまりに敵は狡猾で強力。グリンダはエルファバにすべての真実を明らかにすべきだと説得するがエルファバは拒絶。グリンダにカーテンで仕切られた隅に隠れているように、と言う。小さな女の子ドロシーから水をかけられたエルファバの姿は小さくなっていき、やがて消えてしまう。

残されていたのはエルファバの黒いとんがり帽子だけ。グリンダはオズへ戻り、魔法使いにエルファバの形見を見せ、この国を去るように言う。めでたしめでたし。

という具合に、両者合意の上で、強大な敵を倒すために一芝居を打って大団円を迎えるところが似ているなと。何が善で何が悪か。世間に見えているものが全てではない。むしろ表に見えているものと、現実は正反対なのではないか。ならば、表で「悪」を演じることに何の抵抗があろう。いや、むしろ喜んで悪役になろうではないかと。

が、『WICKED』には最後に大どんでん返しがある。

エルファバが亡くなった城に一人のかかしが現れる。かかしはフィエロ(エルファバの恋人)だった。ぽつんと残っていた黒い帽子の下の隠し扉を開けるとそこからエルファバが姿を現す。2人は手をとって歩き出す…

二人が合意の上で政治劇を演じるのであれば、それは「劇」であれば十分だ。スザクが本当にルルーシュを殺す必要まではない。逆に社会的地位を放棄させた上で、個人の幸福をひっそりと追求させる余地はあったのかもしれない。
だが、一個人として生き延びるには、ルルーシュの手はあまりに汚れてしまったということはあろう。そして、そのルルーシュを本当に手にかけることで、スザク自身も業を背負っていく必要があったのかもしれない。いや、むしろ本当に殺し殺されることで、二人の思いが一つになったということか。なんだかBLテイストの渡辺淳一チックな話になってきたので、今日はこの辺で。