これぞ日本の家族〜『歩いても歩いても』

是枝裕和監督の最新作『歩いても歩いても』を観た。出演は、阿部寛夏川結衣、YOU、高橋和也、田中祥平、樹木希林原田芳雄

こういう設定の一日を描いた作品。

ある夏の終わり。横山良多は妻・ゆかりと息子・あつしを連れて実家を訪れた。開業医だった父と昔からそりの合わない良多は現在失業中ということもあり、気の重い帰郷だ。姉・ちなみの一家も来て、楽しく語らいながら、母は料理の準備に余念がない。その一方で、相変わらず家長としての威厳にこだわる父。今日は、15年前に不慮の事故で亡くなった長男の命日なのだ…

親は老いていく。そして、家族の間はいつもどこかぎくしゃくしている。ときに反発したり、気を遣い過ぎたり。でも、根底には相手に対する思いやりがあり、少しずつお互いに理解を深めていく。

これぞ日本の家族の典型。美化されていもいない一方、極端にセンセーショナルでもない。人が家族と時間を過ごすというのはこういうものなのだ。まるで小津作品のように静かな作品だけれども、生々しいまでのリアリティを孕んだ佳作だと思う。