今日のハヤカワ文庫さん(10作品目)

早川書房の「SF&ファンタジイ・フェア」(関連:2008-06-23 - coco's bloblog - Horror & SF)シリーズもいよいよ3巡目に突入。

2巡目までで最も相性の良かった国生さんおすすめの『レ・コスミコミケ』を読む。

レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)

レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)

「鬼才」イタロ・カルヴィーノによるジャンルを超越した作品。主人公であるQfwfqという名前(読めない!)の老人が、宇宙の誕生や、星の歴史、生命の進化について証言者として語る連作集。あまりに時空間のスケールが大きく、途方もないくらい突飛なので、SFなどという狭いカテゴリに収まるものではない。科学のフレーバーはあるけれども、大風呂敷を広げる目くらましにしかなっていない。しかも、風呂敷は最後に行くまで全く畳まれず、宇宙の膨張のようにどんどん広がるばかり。

宇宙の膨張ということで言えば、収録作品の『光と年月』はこんな感じ。

ある夜、わしはいつものとおり天体望遠鏡で観測を続けておった。すると、一億光年の距離にある星雲から一本のプラカードが突き出ているのに気がついた。それには、≪見タゾ!≫と書いてあった。わしは急いで計算をした。その星雲の光は一億年かかってわしの目に届いたのであり、またむこうではここで起きたことを一億年も遅れて見たわけなのだから、彼らがわしを見たというその瞬間は二億年以前のことでなければならないわけだった。
(『光と年月』より)

ここから「二億年前に自分が何を見られたのか」「そのプラカードにどう返事をするのか」などなど、カルヴィーノの才能は、まるでクエーサーのように輝きを放つ。

総じて「ホラ話」と片付けることができる荒唐無稽な筋立てばかり。どこか幻想的で、静かに美しく、ときにほろりとさせられるけれど、総じて前衛文学特有の実験的な面(主人公以外の人物の名前の読みにくいこと!)が鼻につき、ちょっと僕には頂けなかった。読み進むうちに学生時代に文学論の講義でカルヴィーノを読まされた苦い思い出が蘇ってきたこともあり、今回は★☆☆☆☆。マニアック路線には当たり外れがある。

  • 国生さんのおすすめ

★☆☆☆☆レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)(レビュー=id:SHARP:20080801)
★★★★★あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)(レビュー=id:SHARP:20080731)
★★★★★祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)(レビュー=id:SHARP:20080714)

  • 早川さんのおすすめ

★★★★☆決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)(レビュー=id:SHARP:20080715)
★★☆☆☆火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)(レビュー=id:SHARP:20080703)

  • 帆掛さんのおすすめ

★★★☆☆きみの血を (ハヤカワ文庫NV)(レビュー=id:SHARP:20080717)
★★★☆☆ローズマリーの赤ちゃん (ハヤカワ文庫 NV 6)(レビュー=id:SHARP:20080708)

  • 岩波さんのおすすめ

★★☆☆☆ドゥームズデイ・ブック〈上〉 (ハヤカワ文庫SF) ドゥームズデイ・ブック〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)(レビュー=id:SHARP:20080727)
★★★★☆砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF 273)(レビュー=id:SHARP:20080523)

  • 富士見さんのおすすめ(一巡目で脱落)

★☆☆☆☆たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)(レビュー=id:SHARP:20080707)