奇跡のような作品〜『西の魔女が死んだ』

劇場で予告編を見て気になっていた『西の魔女が死んだ』(公式サイト:映画『西の魔女が死んだ』一般ページトップ)を観に行く。新宿武蔵野館という小さい劇場だったが毎回立ち見が出るほどの人気。

学校へ行けないまいは、田舎の祖母のところで生活することに。まいは、祖母の家系が魔女の血筋だと聞く。祖母のいう魔女とは、代々草木についての知識を受け継ぎ、物事の先を見通す不思議な能力を持つ人だと知る。まいは自分も魔女になりたいと願い、「魔女修行」を始める。この「魔女修行」とは、意志の力を強くし、何事も自分で決めること。そのための第一歩は規則正しい生活をするといった地味なものだった。野苺を摘んでジャムをつくったり、ハーブで草木の虫を除いたりと、身近な自然を感じながらの心地よい生活が始まる。次第にまいの心は癒されていく。魔女はいう。「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」…

何といっても役者がいい。おばあちゃん役のサチ・パーカー。しゃんとしていて日本語が綺麗。シャーリー・マクレーンの娘だと聞いて納得。確かに顔が似ているかも。そして、まい役の高橋真悠。純粋だがどこか危なっかしい幼さを抱えている。クライマックスの演技に泣かされる。脇役の木村祐一、りょう、大森南朋もよい存在感だった。

監督の長崎俊一が梨木香歩の原作をサンクチュアリのように仕上げた作品。居心地のいいこの世界の中にいつまでも浸っていたいと思わせる。大げさなところは全くなく、ただただ自然にそこにいることの素晴らしさを謳いあげた奇跡のような作品。そして、生きること、死ぬことの意味を前向きに考えさせられる。しばらく心に残りそうだ。

原作も読んでみるか。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)