『"文学少女"と慟哭の巡礼者』

"文学少女"シリーズの5作目にして、シリーズの「起承転結」の「転」となる節目の作品。

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)

痛い。実に痛い話だ。「ライト」でも「スイート&ビター」でもなく、ひたすら胸を刺すように痛い。読み進めるたびにズキズキする。けっして水彩画調の淡い表紙に騙されてはいけない。

著者はこの巻を書きたいがために、ここまで登場人物を引っ張ってきたのだろう。伏線の見事さに敬服。この人は人間の心の闇を知っている。その深淵を覗いたことのある人だけにしかできない描写が、ここにはある。そして、僕らは近しい人の心の闇とどう付き合っていけばいいのか。そして、自分の中の心の闇とどう付き合っていけばいいのか。

その答は、"文学少女"の遠子先輩が知っている―