この投げっぷりはエヴァの呪縛か〜『NHKにようこそ(8)』

滝本竜彦は、結局、エヴァから卒業できなかったのか。

NHKにようこそ! 8 (角川コミックス・エース 98-12)

NHKにようこそ! 8 (角川コミックス・エース 98-12)

コミック版『NHKにようこそ』の最終巻となる第8巻を読了した。原作からかなり脱線、いや、エピソードを広げたコミック版だが、エンディングは結局「セカイ系」。要するに、相手(この作品では中原岬)に対する自分の内面のありようこそ全て。

ひきこもりになっているとか、フリーターとしてコンビニでアルバイトしているとか、ゲームクリエーターの卵を演じているとか、どの状態も本質的には相違はない。もっとも重要なのは、自己をどう定義し、それが対峙する異性にどう理解されるかという点に集約されるのが、セカイ系の特徴だ。

最終回は半ばヤケクソのように支離滅裂。初回特典の「ひきこもり卒業証書」も、本当に取ってつけたようで虚しい。

原作者の滝本竜彦はコミックのあとがきでこう書いている。

何度も何度も、この漫画は成功しました。タイトロープの上で宙返りするかのごときアクロバットをこなし、成立するはずの無い奇跡的ギャグを幾度も達成し、しかし、しかし……きっと最後は墜落したのでしょう。

この最後の墜落っぷりからして、結局、滝本竜彦はエヴァの呪縛から逃れられなかったのだなと思う。まあ、楽しませてくれた時期もあったけどね。