福井晴敏の『終戦のローレライ』を読了した。もともと映画化が前提となって生まれた作品ということで、巻末の解説によれば「第二次世界大戦・潜水艦・女」という三題噺で始まった企画だという。
(以下ネタバレを含みます)
この作品、ガンダムおたくには馴染みの深いキャラクター、シチュエーションが満載だ。以下列挙すると、いかなる権威であろうと歯向かうことをためらわない17歳の少年、知覚が超人的に発達した少女、ある種の「囮」となって孤軍奮闘する戦艦(潜水艦)、「化け物か」と敵に言わしめる戦力、実戦で経験を積んだベテランの捨て身の戦いぶりなどなど。「黒い三連星」のようなチームワークで主人公を脅かす戦艦三杯も登場する。
歴史小説なのかSF小説なのか微妙な位置付けであるが、エンタテインメントとしては一級品といっても過言ではなく、よくこれだけの大作に仕上げたものだと感心する。
ただ、気に入らない点もある。この作品で福井が描いているのは、戦争の不条理と、その中で何とか生甲斐を見出そうとする人間の生き様だ。彼の視点は「何かを守るために戦うのは、悪いことではなく、むしろ尊いことだ」というもので、敗戦後の日本に蔓延した「戦争=悪」というステロタイプな図式へのアンチテーゼであるように感じる。それは、僕たちのようなガンダム世代に対して、現在の日本にとっての戦争の持つ意味を(もちろんポジティブな意味で)示そうしているようにも読める。個人的には、ちょっと相容れない価値観だ。
同じように、強い違和感を感じたのは、終章の取って付けたような後講釈的な戦後史の解説。「戦後日本」を論じるときの妙な説教臭さは、この小説の読後感をも損なっているように思う。
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