東証の官僚体質は変わらず

東京証券取引所(以下、東証)がシステムトラブルを起こして、13時半まで商いができない状況が続いた。背景には、インターネットトレードの普及による取引の増加があり、今回のトラブルも、取引急増に対応したプログラムの変更が原因ではないかと見られている。

会見を行なった東証の天野常務のコメントで目を引いたのは以下のところ。

十分検証できていたのか見る必要がある。場合によってはベンダー*1は商品を製造した責任がある。

あからさまな責任転嫁をすることは避けているが、あたかもベンダーに原因があるかのようなさりげない情報操作を行なうあたりに、東証の「官僚体質」が透けて見える。

これは、JR西日本が、福知山線の事故の直後にこう発表したことを連想させる。

何者かが石を置いた可能性は高い。

責任を転嫁できる可能性のあるところを名指ししておくことで、自らへの非難の矛先を緩めようとする。それでいながら、他者に責任があると断定することはしない。きっと、その立証責任を負いたくないからだろう。

しかし、このような責任逃れの卑怯な態度は、いまやすぐに見透かされてしまう。監督官庁との間で「馴れ合い」を演じていたころならともかく、インターネットで専門家の発する情報が瞬く間に行き渡る時代に、茶番めいた情報操作は決して上手くいかない。

相手がマスメディアであろうと、世論であろうと、はたまた投資家であろうと、下手な情報操作を行なう企業には、ネガティブな評価が下される。言い換えれば、独り善がりな保身に走ることは、かえって支持を失わせる結果になるということだ。

この日の日経平均は、終値13,867円(前日比+261円)と大幅高となったけれども*2、かりに「東京証券取引所」という企業が上場していたら、その銘柄は大幅安になっていたに違いない。

東証は、自ら上場しようとしているのにもかかわらず、今回の責任転嫁コメントによって、自らを評価する投資家に対するセンスが欠如していることを露呈してしまった。

トラブルを100%避けるというのが不可能であるとするならば、むしろ大事なのはトラブルをどう説明するかだ。雪印の「私は寝てないんだ!」とか、みずほの「実害はない」などの失言を受けて、この種のリスクマネジメントについて、上場企業は相当研究したと思われるのだが、どうやら東証自身はまだそこまでたどり着いていないようだ。

いまのような「官僚体質」のままでは、上場候補企業としては、東証の行く先は決して明るくない。今後の原因究明や経営の責任の取り方で、どこまでリカバーできるのか注目していきたい。

*1:富士通

*2:もし、株価指数が下がっていたら、メディアや評論家はこぞってその原因を東証のシステムトラブルのせいにしただろう