追記=「無差別テロ」はあくまで無差別


さっそく乱暴な報道が出てきた。

(前略)

シティーは欧州最大の金融・資本市場を持ち、英国のGDP(国内総生産)の約2割を稼ぎ出すといわれる。ロンドンの富を象徴する存在で、92年には北アイルランド独立を求めるアイルランド共和軍(IRA)の犯行とされる爆弾テロに見舞われるなど、これまでもテロの標的にされてきた。

 国際テロ組織アルカイダが01年の米同時多発テロで、ニューヨークの世界貿易センタービルを攻撃したのと同じ構図だ。日本の地下鉄サリン事件でも、官庁街の霞が関を通る路線が攻撃されており、富や支配の象徴をねらい撃ちするテロといえる。

(後略)

(2005年07月08日10時40分 朝日新聞「英テロ、狙いはシティー?」)

http://www.asahi.com/international/update/0708/005.html

「富や支配の象徴をねらい撃ちするテロといえる」だって?

そもそも9.11にしろ、オウムにしろ「無差別テロ」であって「ねらい撃ち」ではない。この部分だけをとっても、朝日新聞は、無差別テロリストが特定のターゲットをねらい撃ちにしていたと解説することにより、「無差別」だという本質を隠蔽ないし歪曲して、テロリストの罪を軽くしようとしている。

たとえば地下鉄サリン事件の被害者には富とも支配とも縁遠かった人もいるわけで、そういう被害者も十把一絡げにして「富や支配の象徴としてねらい撃ちされた」などと訳知り顔で断じることは、テロリストの立場を補完する効果を持つ。キレイゴトの主張*1と、実際に行なった非人道的な行為の隔たりについては、報道機関は正しく見定めるべきだろう。無定見な報道は、被害者の立場からすれば、言論による第二のテロルになり得ると言えよう。

今回のような無差別テロに限らず、通常の犯罪においても、メディアは、しばしば犯罪者や加害者の動機を報じるのだが、その報道が第二の加害・第二のテロルになってはならない。そんなことは、犯罪被害者を巡る報道被害を踏まえて、とっくに学習したものと思っていたのだが。

*1:ちなみに今回の犯行声明中で「富」ないし「支配」に対するテロであるという主張があったとは確認されていない