ダイエー支援からウォルマーク撤退?

日経の観測記事だが、ダイエーの再建支援の有力スポンサーの一つだった米国のウォルマート・ストアーズが、入札からの撤退を検討していると報じられた。
理由としては、産業再生機構がダイエーの株式の3分の1を保有する方針で、ウォルマートは経営の主導権を握れないことを懸念しているという。

もちろん、これはウォルマート側のマスコミリークを用いた揺さぶり作戦かもしれない。つまり、撤退カードをちらつかせることによって、産業再生機構の出資方針に対して世論の批判を喚起し、自社に有利な条件を機構から引き出そうとする狙いがある可能性はある。が、この議論は、ウォルマートに限らず、潜在的なスポンサー*1に共通して言えることであり、ウォルマートでなくて、イオンでも、イトーヨーカドーでもどこでも同じことがいえ、産業再生機構がダイエーへの出資に固執するあまりに、大口のスポンサー候補を尻込みさせてしまうのであれば、本末転倒だと言わざるを得ない。

産業再生機構の存立意義は、再建先の事業再生である。だから、再建先に相応の出資を行って議決権を確保したり、役員を派遣したりするのは、事業再生に必要なコーポレートガバナンスを確保するために必要な手段だといえる。だが、これはあくまで手段であって、それ自体が目的になってはならない。有力スポンサーが支援に乗り出すというのは、条件の詳細にもよるが、基本的には再建のゴールとしてベストシナリオの一つと考えられ、その実現に最大限の精力を費やすのが本筋である。

にもかかわらず、機構がダイエーへの出資に固執する理由として考えられるのは、(1)経済的なリターン、すなわち株式引受後の株価の上昇によって利益を得たい、(2)社会的な評価、すなわち、産業再生機構も相当程度ダイエーの再建に関与したという実績を認知させたい、のいずれかではないかと推測される。こうした経済的なリターンや社会的な評価というのは、産業再生機構の存立意義に照らし合わせると、著しく優先順位の低い項目であり、いわば副産物に過ぎないのだが。

機構が出資に固執してスポンサーを撤退させてしまうようなことがあれば、これはダイエーにとって悲劇であると同時に、機構にとっても自殺行為であるといえる。副産物の追求に夢中になるあまりに主産物を失うのでは、あまりに愚か過ぎる。

*1:現時点で名乗りをあげているスポンサーは全部で7企業・ファンドといわれており、イトーヨーカドー、イオン、ウォルマート、丸紅、キアコン、カーギル、アドバンテッジパートナーズ