映画

シーズン1と2を通じて描かれた光と影〜『全裸監督』(武正晴総監督、山田孝之主演)

お待たせいたしました、お待たせし過ぎたかもしれません。『全裸監督』のシーズン2がNetflixで公開され、最終話まで見たので感想を残しておこうと思う。『全裸監督』は、2016年に太田出版から刊行された『全裸監督 村西とおる伝』を元にネトフリがオリジナ…

『夏への扉 キミのいる未来へ』(2021年・日本、三木孝浩監督)

時間旅行SFの古典とも呼ぶべきハインラインの『夏への扉』。当時に比べればタイムリープ系やループ系の設定は市民権を得てはいるが、このジャンルでは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という大傑作があるだけに、映画チャレンジのハードルは高くなってい…

『閃光のハサウェイ』(2021年、村瀬修功監督)

『機動戦士ガンダムUC』の映画が完結を迎えた2018年11月、次の宇宙世紀モノとして3部作での製作が発表された『閃光のハサウェイ』。富野由悠季による原作小説は、小説『逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』の続編として発表されたが、映画の方は映画『…

『あのこは貴族』(2021年、岨手由貴子監督)

『あのこは貴族』を観に、新宿武蔵野館へ。山内マリコの2015年の小説を原作に岨手由貴子監督が映画化したもの。東京の山手に生まれ育って何不自由なく生活を送ってきて婚期を迎えて久しいアラサーのお嬢様。地方都市(原作者の出身地と同じ富山)から上京し…

『漂流ポスト』@アップリンク渋谷(清水健斗監督、神岡実希さん、中尾百合音さん舞台挨拶)

『漂流ポスト』を観に、再びアップリンク渋谷へ。前回の鑑賞時には気付かなかった細かい演技を味わえた。トークショーは、清水健斗監督、中尾百合音さん、神岡実希さん(左より)。この作品でロンドン国際映画祭外国語部門最優秀助演女優賞を受賞した神岡さ…

『漂流ポスト』@アップリンク渋谷(清水健斗監督、神岡実希さん舞台挨拶)

3.11から丸10年。清水健斗監督と神岡実希さんの舞台挨拶があると言うことで、『漂流ポスト』の上映に足を運んできた。シューマンをバックに神岡実希さんと中尾百合音さんが交流する場面の映像の美しさが忘れ難い。もう帰ってこないキラキラとした時間。終演…

死ぬまで青春は終わらない〜『あの頃。』(2021年、今泉力哉監督)

コロナ時代になって自宅でネトフリが捗っているけれども、それはそれとして、やはり劇場に新作を観にいくのはやめられない。ハリウッド映画が軒並み延期となる中で、意外にも邦画の新作は豊作になっている。ということで、今週4回目の映画館。好きな監督の新…

人間らしい泥臭さ〜『すばらしき世界』(2021年、西川美和監督)

昨日ヤクザ映画『ヤクザと家族 The Family』を観に行ったばかりなのに、今日またヤクザ映画『すばらしき世界』。wwws.warnerbros.co.jp 二日連続でヤクザ映画を観にいくのは、自分はヤクザだからというわけではなく、ヤクザが好きだからというわけでもなく、…

破滅と滅びの美学〜『ヤクザと家族 The Family』(2021年、藤井道人監督)

去年の日本アカデミー賞で三冠を取った藤井道人監督の最新作『ヤクザと家族 The Family』。www.yakuzatokazoku.com基本的にヤクザ映画は観ないんだけれども、いま自分が最も注目しているクリエーターの常田大希率いるmillennium paradeが主題歌「FAMILIA」を…

フィクションとノンフィクションの間〜『タイトル、拒絶』(2020年、山田佳奈監督)

劇団□字ックを主宰する山田佳奈が、2013年から公演している『タイトル、拒絶』を自ら監督となって映画化した作品。伊藤沙莉がメインで出ているということで今回見に行ってきた。lifeuntitled.info 都内(鶯谷あたり?)を舞台にした派遣型のセックスワーカー…

『ステップ』(2020年、飯塚健監督)

ネトフリで『ステップ』が観られるようになった。『 全員、片想い 』の『 NICKNAME is BUTATCHI』を手掛けた飯塚健が監督。重松清の原作で、妻に立たれたシングルファザーの子育てを山田孝之が演じる。娘役は幼稚園から小学校卒業までの期間を3人の子役でリ…

『全員、片想い』〜「MY NICKNAME is BUTATCHI」(2016年、飯塚健監督・脚本)

最近、韓国ドラマか伊藤沙莉ばかり観ていて、今日もネトフリで「伊藤沙莉」で検索したら出てきた『全員、片想い』。飯塚健監督・脚本の1stエピソード『MY NICKNAME is BUTATCHI』を観た。幼馴染に「ブタっち」とあだ名をつけた2人の微妙な距離感を描いた作品…

伊藤沙莉の女優としての覚悟〜『獣道』(2017年、内田英治監督)

最近、伊藤沙莉をCMで観ることが凄く増えた。子役時代から難しい役を演じてきただけあって、深みのある演技力の持ち主だが、それだけでなくルックスにも人懐っこさを感じさせるところが魅力のように感じる。そんな伊藤沙莉が女優としての覚悟を見せてくれて…

イデア的な「女性の強さ」を描き切った『ワンダーウーマン 1984』(パティ・ジェンキンス監督、2020年、アメリカ)

ガル・ガドット主演『ワンダーウーマン』(2017年)の続編。wwws.warnerbros.co.jp 前作が第一次世界大戦中のドイツとイギリスの戦いを舞台にしていたのに対して、本作では核軍拡の最中にある米ソの冷戦を舞台としている。ストーリーは、細部の詰めの甘さが…

『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』(2020年、ドイツ)

『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』を観た。helmutnewton.ayapro.ne.jp映画作品というよりは、内容の充実したドキュメンタリーという感じ。ファッション写真界の巨匠であったヘルムート・ニュートンの生涯を、本人の過去のインタビュー映像や、モデル…

繊細で叙情的な描写に溢れる傑作〜『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(2020年、石立太一監督)

遅ればせながら『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観に行った。violet-evergarden.jp孤児から軍に拾われて「戦闘少女」となった主人公。戦場を離れた後、郵便会社で代筆を行う仕事につき、職業を通じて「人を愛する」ことを理解しようと務めるな…

完璧なタイミングで世に出た完璧な作品〜「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」

コロナのステイホーム期間で爆発的に支持が広がったコンテンツが『鬼滅の刃』だろう。2019年放送のufotable制作のアニメで人気に火がつき、続きが気になって原作コミックを買い集める人も急増(僕もその一人)。週刊少年ジャンプへの連載もジャンプシステム…

時間反転のアクションに見所ある娯楽大作〜『TENET テネット』(クリストファー・ノーラン監督、2020年)

クリストファー・ノーランの最新作『TENET テネット』。2020年の『インセプション』では「夢の中に入る」という設定で、重力が変幻自在に移り変わる映像を観せて観客を驚嘆させたクリストファー・ノーラン監督。今作では「エントロピーが減少する物質」とい…

『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』

とにかくひどい話だ。目をキラキラ輝かせてアイドルになった平手友梨奈を、大人達が「孤独なヒロイン」を演じる生贄に祭り上げて、心身ともにボロボロになって「僕は嫌だ」と叫ぶ彼女をステージに上げる。上げ続ける。10代半ばの本人がおかしくなるのは当然…

『宇宙でいちばんあかるい屋根』(2020年、藤井道人監督、清原果耶主演)

昨年公開の『新聞記者』で日本アカデミー賞の最優秀作品を受賞した藤井直人の最新監督作品『宇宙でいちばんあかるい屋根』が封切になったので早速観に行ってきた。映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』公式サイトシアターは新宿バルト9。この日が初日とあっ…

『The Witch/魔女』(パク・フンジョン監督、2018年、韓国)

Netflixで『梨泰院クラス』を観て、イソを演じたキム・ダミにハマった。彼女のスクリーンデビュー作と言える『The Witch/魔女』を観た。(以下ネタバレあり) 施設を抜け出した特殊能力を持つ少女。記憶を失った状況で保護され、養父母の元で「普通の子」と…

追体験したかったのかもしれない〜『1917 命をかけた伝令』(サム・メンデス監督、2019年、英米)

サム・メンデスは僕の大好きな監督の一人。現代アメリカ社会の病理と、中年男性のミドルクライシスを同時に描いたデビュー作の『アメリカン・ビューティー』(1999年)でいきなりアカデミー賞監督賞を受賞し、イギリス王室からは大英帝国勲章を受章。10年代…

それぞれの格差社会の生き方〜『パラサイト』『ジョーカー』『万引き家族』

r>g (トーマス・ピケティ『21世紀の資本』) 「r>g」は、資本のリターンが経済成長率を上回ることを示す不等式で、トーマス・ピケティが『21世紀の資本』の中で示したものだ。いわゆる資本家はさらに富を増やす、ということは、時間が経てば経つほどに貧富…

モトーラ世理奈の存在感が印象的〜『風の電話』(監督・諏訪敦彦、2020年、日本)

『風の電話』を観てきた。 www.kazenodenwa.com東日本大震災で家族を失った少女が広島から岩手までを旅するロードムービー。遠く離れた親戚に引き取られていて、友人らしい友人もいなくて、周囲に心を閉ざして言葉少ない主人公が、故郷に向かう道の中で色々…

ミュージカルに遠く及ばない失敗作〜『キャッツ』(トム・フーパー監督、2019年、英米)

「映画」とは拡張のことである。「写真」に対しては時間の概念を加えることにより、「演劇」に対しては多面的な観点を導入することにより、より創造性の高い表現を行うことができる。だが、「映画」はそのような拡張性を持つがゆえに、観客への見せ方を誤る…

※ただしイケメンに限る〜『ラストレター』(岩井俊二監督、2020年)

小沢健二が2020年にリリースした新曲『彗星』は、1995年の冬の回顧するところから始まる。 1995年冬は長くって寒くて 心凍えそうだったよね 僕にとって、1995年の冬といえば、岩井俊二の初の長編監督作品『Love Letter』。同姓同名の「藤井樹」の間で奇妙な…

いんだよ、細けえこたあ〜『スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』(EP9)

日米同時公開となった2019年12月20日、IMAXレーザーの新宿TOHOシネマを選んで鑑賞して来た。後期三部作の最初の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(J・J・エブラムス)は、往年のスターウォーズファンの求めるツボを押さえつつ、新たなヒロイン、新たなド…

『愛なき森で叫べ』(2019年、園子温監督、NETFLIXオリジナル)

1ヶ月くらい前、劇場に足を運んだときに、入場で豪華チラシが配られ、予告で力の入った動画を見せられる。それが『愛なき森で叫べ』だった。NETFLIX、プロモーションにお金かけてるよなと思ったが、内容が内容だけになかなか見る機会がなく今日になってしま…

おっさんはつらいよ〜『ジョーカー』(トッド・フィリップス監督、2019年、アメリカ)

女性差別、人種差別が「ポリコレ」で許されなくなった時代、ある意味最後に残ったのが「おっさん叩き」。キモカネおっさん(キモくて金のないおっさん)のことは、誰も助けてくれない。そんなおっさんが、「無敵の人」となって無差別大量殺人を犯す事件も増…

スーパースターの光と影〜『ロケットマン』(デクスター・フレッチャー監督、2019年、英・米合作)

そんな大それたものじゃないけれど、これが僕にできる精一杯 僕に与えられたこの歌を、君に贈るよ (エルトン・ジョン『Your Song(僕の歌は君の歌)』) Elton John - Your Song (Top Of The Pops 1971)好きな人への想いをエネルギーに作品を作りたい。そし…