期待を上回る熱量と完成度〜『トップガン マーヴェリック』(2022年、アメリカ、ジョセフ・コシンスキー監督)

トム・クルーズ出世作トップガン』の30数年ぶりの続編『トップガン マーヴェリック』。

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時代も変わったのに、世界観が変わらず、トム・クルーズのかっこよさも変わらず、まさに往年のファンが期待しているものを、その期待を上回る熱量と完成度で見せてくれた。

「若いもんには負けない」と「次世代に託す」のバランスが絶妙。奇策を用いずオリジナルファンの期待に正面から応えながら30余年の続編として時間の重みも意味を持つ作品。「トム・クルーズはいい歳の重ね方してるな、よし自分も」と同世代を鼓舞する。客層もそんな感じ。

いつまでもかっこいいスターということで、今テレビで放映している木村拓哉の『未来への10カウント』に思いを馳せていた。

カリスマ的イケメンが歳を重ねて若者を指導する立場になるという点は共通しているなと。

ただ、大きく違うのは、サイドストーリーの恋愛描写で引っ張るかどうかと、主人公が歯を見せて笑うかどうか。

その辺を衒いなく見せてくれるトム・クルーズには感謝しかない。

戦闘機がドローンにとって変わると言われる中でエースパイロットの意地を見せる作品と、劇場が配信に変わる動きの進む中で大スクリーンならではの作品を見せる作り手。

これがシンクロして感動もひとしおだった。

ポジティブモンスター・あかぎ団 ツーマンライブ@高田馬場BSホール

あかぎ団Gのライブを東京で観られるということで、ポジティブモンスター・あかぎ団 ツーマンライブに行ってきた。

ポジティブモンスターは、全体的にメイドっぽいというかキャラっぽい雰囲気。

告知でめいどりーみんとコラボやると聞いて納得。

あかぎ団は選抜メンバーでの出演。セトリで群馬のご当地アイドル感を出しつつ、王道のアイドルライブ。

随所に2マンの相手のポジティブモンスターのメンバー・ファンへの気遣いも感じられて最高だった。

心の奥を抉る何かがある〜『流浪の月』(2022年、李相日監督)

凪良ゆうによる小説を李相日監督で映画化した『流浪の月』。


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「正しさ」を押し付けてくる社会の息苦しさを描く重厚な作品だった。

マジョリティがマイノリティに対して持つ偏見の息苦しさ。

その中で誰にも理解されずに孤立していくマイノリティの業と理想郷を描く。

女児誘拐事件的な題材ゆえに賛否両論分かれるとは思うが、まさにそのせめぎあいを生むことがこの作品の狙いでもあるだろう。

同じような題材を扱った『幸色のワンルーム』の実写ドラマは、放映開始前にあれだけ燃やされて、テレ朝が批判に恐れをなして結局放映中止を決めた。

それと比べると、『流浪の月』の映画が目立ったアンチキャンペーンなく上映されているのはとりあえず良かったと思う。

ざわざわした感情をもたらすとすれば、それはこの作品に心の奥を抉る何かがあるからだ。

「気持ち悪いから許されない」という極論の対極に「これは純愛だからいい」という結論を置こうとするのも、僕には安直なものに思われる。

例えば、ケチャップと唇の場面は、多様な解釈が成り立つものだと思う。

SNSで映画の感想を見ると、原作小説を読めばあたかも「答」が与えられているかのように言っている人もいるが、僕が原作小説を読んで思ったのは、あの言説こそ、実に体裁のいい言い訳になっていて、それをすらすらと言えてしまうのは、「信頼できない語り手」ではないかと。

人間の感情や欲望は、必ずしもそんなに簡単に言語化できるとは思えないし、簡単に言語化されたものはむしろ疑った方がいいのではないかと。

小説にしろ、映画にしろ、そういうドロドロした名状しがたいと向き合うことこそが醍醐味ではないかと思う。

ケチャップの赤、鼻血の赤、そして洋服の赤。

全てに共通した意味があり、隠喩であると。

いずれにせよ、世間に居場所のなくなってしまう二人を松坂桃李広瀬すずが説得力ある演技で見せてくれる。

また、女児を演じた白鳥玉季の圧倒的な存在感と魅力が光る。彼女の代表作になるかも。

美しい映像、特にクローズアップを捉えたカメラワークも素晴らしい。

誰にでも勧められる作品ではないかもしれないが、「正義」の息苦しさを感じている人には刺さること間違いない。