今村昌弘『屍人荘の殺人』

2017年のミステリ界を席巻した今村昌弘の『屍人荘の殺人』。

年内には実写映画化されるということもあり、遅ればせながら読んでみた。


屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

(以下ネタバレあり)

普通に設定としてゾンビが出て来ることがまず新鮮。

読んでいって、ゾンビ的なホラー感も少なく、「ウィルスで発症する」的な科学的な叙述も少ない。

しかしながら、一般の読者がゾンビについて認識しているある種の「共通理解」を前提に、「もしも本格謎解きミステリにゾンビが出てきたら」的な世界観を一貫している。

その筆力たるや見事という他ない。

「これで新・新本格と呼ばれるとは過大評価」みたいな毀誉褒貶も渦巻くが、個人的にはライトノベル+コナンみたいなテイストのエンタメとして面白く読めた。

屍人=ゾンビの条件がビジュアル的に鮮烈に脳内再現されるし、キャラクターノベルとして気楽に楽しむべき。


那須きのこあたりと比べると伝奇的なテイストが弱いし、西尾維新あたりと比べるとキャラクターのアクが弱いと感じてしまうけれども、これがデビュー作であると考えると、十分に及第点以上に達しているし、著者ならではの世界観の構築は「今後の作品に期待」だと思う。


第二弾が『魔眼の匣の殺人』ということで、タイトルから漂う厨二病感に思わず笑ってしまうんだけれども、そっちも読んでみよう。

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