美術展には流行がある。
クリムトの展覧会を最初に見たのは、今から10年前、2008年のNYのNeue Galerie。
「この人の作風はかなりエロティック」なんていう小学生並の感想は恥ずかしい限りだけど、当時NYではファッション的に注目を集めていた。
そして、翌2009年には、クリムトとシーレを目玉とする展覧会が日本で開かれた。
「クリムト、シーレ ウィーン世紀末展」と銘打たれた展覧会は、ウィーン大使館の後援を得てはいたけれども、会場は日本橋高島屋。
まだ、日本においては、広範な支持を得ているとは言えない時期だったと思う。
2017年に、個人旅行で訪れたウィーンのベルヴェデーレ宮殿ではクリムトの代表作『接吻』を鑑賞することができた。
本場だけあって大人気、作品の迫力も凄かった。
そして、2019年。
いよいよ、日本でも過去最大級のクリムトの展覧会が開かれた。
会場は東京都美術館。
タイトルは「クリムト展 ウィーンと日本 1900」と名付けられた。
クリムトの創作活動を、「世紀末ウィーン」の文脈で捉えるだけでなく、日本の開国による浮世絵の欧米流出で始まった「日本ブーム」の影響も示そうという、まさに日本の企画展ならではの試み。
クリムト自身の作品としては「ユディットI」「ヌーダ・ベリタス」あたりが目玉であったが、同時代の先達、同僚などの作品120点超を時系列的に示す意欲的な展示。
華やかな世紀末ウィーンで、最先端画家として人気を獲得し、モデルらを相手にして14人の婚外子を設けた彼の生き様が浮かび上がる。
金箔をふんだんに使ったゴージャスな作品も目立つ。
肩の力の入りまくった作品群は、個人的にはちょっと苦手な部類に入るというのが正直なところ。
そんな中、姪のヘレネを優しい筆致で描いた一枚が心に残った。
ギフトショップでポストカードを買って帰るつもりが、レジでB2版のポスターが1500円で売られているのを見つけて、そちらの方を購入。
部屋に飾って癒されるクリムトって、なかなかないかも。
クリムト展、相応に盛況という感じで、日本の西洋絵画展も印象派一辺倒を脱してきたなという感想。
世界的な流行を、多少遅れつつ追いかけているのかもしれない。
次は、パナソニック汐留美術館の「ギュスターヴ・モロー展」に行ってみようかな。