永遠の一番星になったーつりビットラストライブ~Sail Away~@マイナビBLITZ赤坂

永遠の一番星 そんなヒカリになりたい
サヨナラの先に祈る ありがとう
瞳閉じて今
(つりビット「プリマステラ」)

アイドルはいつかは終わる。

だが、どうせ終わるなら、最後の最後まで楽しくて美しい夢を見させてほしいー



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2019年、つりビットが約6年の活動期間を締めくくるラストライブ〜Sail Awai〜をマイナビBLITZ赤坂で行った。

タイトルの「Sail Away」は「出航」という意味で、新たな旅立ちを意味するという。

聞き慣れないOvertureに続いて、「スタートダッシュ!」でライブが始まる。

2013年5月、配信限定のこの曲でつりビットはデビューしたのだった。

次の曲は、今やライブアイドルのアンセムとなった「真夏の天体観測」。

初めてのCDシングルタイトル曲である。


【公式】つりビット『真夏の天体観測』MV Full ver.

まるでつりビットのデビューからの歩みをなぞるかのように始まった「Sail Away」。

衣装もこの日のために作られた白と青のセーラー。爽やかな空と海を表しているかのようだ。


「いつか世界を釣り上げます」から「釣りたい魚は・・・」というお馴染みの自己紹介はどこまでも明るく、今までのつりビットの楽しいライブと変わらない。

真夏のギラギラした日差しを運んでくるようなタオル曲「A Color Summer!!」、切なさのあるメロディに大きなコールのかぶさる「レモン海岸」、MIX・推しジャンなんでもありの沸き曲「裸足のマーメイド」、そしてオリコン週間5位のヒット曲「Chuしたい」。

「オレモー!」「ウリャオイ!」から振りコピ、ガチ恋キャンセルまでありとあらゆるライブの楽しさが詰まったような曲。

ステージには何のギミックもなかったが、曲の力、メンバーの気迫、ファンの盛り上げ、そして、音響や照明の素晴らしさのおかげで、このライブを過去最高に楽しいものにしてくれる。

次のパートは、夏の爽やかな風を感じされるナンバー。

アメリア西海岸の風を運んでくるようなギターのカッティングで始まる「Blue Ocean Fishing Cruise」、山下達郎の名曲を現代風にカバーした「踊ろよ、フィッシュ」、そして湘南海岸沿いの道路の景色が目に浮かんでくるようなドライブソング「渚でラテアート」。

「つりビット=夏」「つりビット=海」というイメージを持っているアイドルファンも多いと思う。

でも、夏にもいろいろな夏があるし、同じように一口に海と言ってもいろいろな海がある。

そんなことをつりビットの多彩な楽曲は教えてくれる。


続いては「メルヘンチックな曲」というMCに続いて、「ウロコ雲とオリオン座」「不思議な旅は続くのさ」「ムーンライトキッス」「カモメペリカンストーリー」を4曲続けて。

切なさを湛えた曲、幻想的な世界観の曲、ロマンティックな曲、そしてゆったりとしたバラード・・・

「つりビットにはこういう世界もある」というのを改めて思い知らされる。

ちょっと懐かしいテイストの曲に続いては、クールなつりビットのブロックへ。

シティポップス・フレーバーの強い「TOKYO WONDER GIRL」、ディスコ・ファンクの「Piece of Cake」、ブルーアイドソウル的な「Get Ready Get a Chance」。



どの曲もクラブで流れたら思わずフロアが沸き立ちそうなダンサブルなナンバー。

スタイリッシュな照明の演出もあって、つりビットのダンスフォーメーションの美しさが引き立つ。

5人がBLITZでクールに踊る姿を見て、東京女子流が2014年にここ赤坂BLITZで行なっていた「HARDBOILED NIGHT」公演を思い出さずにはいられなかった。

そんな感じでライブは後半へ。

つりビットと言えば、釣り!そして魚!

安藤咲桜のつりセンター曲「Go! Go!! Fishing」、小西杏優を全面的にフィーチャーした「 釣りパーティー」、長谷川瑞のつりセンター曲にして最強のキラーチューンに育った「ニガシタサカナハオオキイゾ」、渋谷系をオマージュしたようなラテン系ポップス「ハピハピフィッシングデート」などが次から次に繰り出される。

そして、ここでつりビットライブ名物の釣竿ロッドくん登場。

「寿司パラダイス」では、ロッドくんにつけたぬいぐるみをメンバーが客席に向かってキャスティング。同時にサインの入ったグッズを客席に投げ込む。

赤坂BLITZの広い会場にくまなく、というわけにはいかなかったけれども、できるだけ遠くに投げて、一人でも多くのファンを楽しませようとするメンバーの心意気が伝わってくるようだった。

この時間が無限に続けばいいのに、と思ってしまった。

釣りブロックのクライマックスは「爆釣御礼」。

タオルを回すだけでこんなに楽しい気持ちになれる曲もなかなかない。

「♪釣ってー釣ってー釣り上げるー!」のメンバーの煽りが楽しすぎる。

身体を動かして汗が湧き上がってくる。

一息ついていると、メンバーのMCの声がシリアスになる。

「私たちの出航の時がやってきました…」と。

ここから「別れ」をテーマにした「旅立ちキラリ。」、「桜じゅうたん」、「ラムネ色のスケッチ」。

「旅立ちキラリ。」「桜じゅうたん」は普段あまり聴けないが、こういう日に聴くと今までで一番刺さるものがあった。また、「ラムネ色のスケッチ」は終わりゆく夏を惜しむような歌詞だが、終わりゆくライブ、終わりゆくつりビットを惜しむような気持ちになり、自然と涙がこみ上げてきた。

そして、メンバー一人一人の挨拶。

「6年前、歌もダンスもMCも出来なくて、迷惑をかけた。でも、アイドルが力をくれた。自分もそうなりたいと思って、今ここに立っている。最後まで”アイドル”でいたい」(安藤咲桜

「つらいこと、悲しいこともあったけど、それ以上に楽しいこと、うれしいこと、感動することがあった。メンバーが変わらないグループはあまりないけど、そんななか6年間同じメンバーで活動できたのは、この4人だから」(聞間彩

「小学生から高校まで青春の全てをつりビットに捧げてきた。でも、もっと素敵な景色を見せてあげたかったという悔いはある。これから私たちはいなくなるけど、みなさんにはつりビットの曲とたくさんの想い出とともに笑顔で生きていてもらいたい」(小西杏優

「自分に自信もなくて、ふがいない姿ばっかり見せても、みんなが『大丈夫だよ』って言ってくれるから、頑張ってこれた。私、ここにいていいんだなって思わせてくれた。つりビットは本当に私の居場所だった」(長谷川瑞

「ずっとつりビットのことを考えて生活していた6年間だった。本当ならもっと上に行けたし、もっと上に行きたかった。でも、つりビットにはたくさんの想いが詰まったとっても素敵な曲がある。その曲を聴き続けてくれれば、つりビットはずっと生き続ける」(竹内夏紀)

メンバーが泣いて、言葉をつまらせて、沈黙が訪れても、「頑張れ!」などという野暮な言葉を発する人は一人もいなくて、自然と次の言葉が出てくるのを静かに待っていた。

その間(ま)こそが、つりビットのメンバーとファンが築いてきた信頼関係の証の一つのように僕には思えた。

終盤は「1010〜とと〜」「My Victory」、そして最後に「プリマステラ」。

永遠の一番星 そんなヒカリになりたい
サヨナラの先に祈る ありがとう
瞳閉じて今
(つりビット「プリマステラ」)

つりビットというグループの<物語>をそのまま歌にしたような楽曲たち。


【公式】つりビット『プリマステラ』MV Full ver.

頂点を目指して長い旅を続けてきたつりビットは、ここで旅を終えた。

だが、悲しむことはない。

空を見上げれば、そこに一番星として輝いている。

僕たちは、明日からつりビットの音楽を供にして、新しい旅に出ることもできるのだから。


アンコールでは、つりビットとファンの関係を曲にしたような「'Cause you make me happy」、そして真っ白なサイリウムが場内を埋め尽くした「終わらないSummer Breeze」。

もうつりビットというグループはないけれども、夏はまたやって来る。

季節が巡るのに「終わり」はない。

そんなことを思いながら、僕らはこの「終わらないSummer Breeze」を聴くのだろう。

ダブルアンコールでは、もう一度「真夏の天体観測」を。

これがラストつりビット。

なんて、楽しく、美しく、そして、切ない光景だろう。


最後のMCは「以上、いつか世界を釣り上げます!つりビットでした」から、メンバーで手を繋いでマイクなしで「ありがとうございました!」。

やり切った。

6年間、完璧なアイドルを続けてきたつりビットが、ライトライブを「有終の美」で飾った瞬間だった。


ダブルアンコールの最後の最後まで、つりビットはつりビット。

(2015.6.6 日比谷公園小音楽堂で撮影)


結成以来、一人のメンバーも欠けることなく、もちろん不祥事もなく、楽曲のクオリティも落とさず、コンセプトをぶらさずに活動を続けて来たつりビットらしい“完璧なフィナーレ“。

細工なしで<物語>を楽しませてくれた。

解散は本当に寂しいが、つりビットの音楽は人生の<友>としてこの先も僕らの側で生き続けるだろう。

そして、僕らは、つりビットと一緒に過ごした2010年代のアイドルシーンを、満ち足りた感覚とともに振り返る日がいつか来るだろう。

「楽しかったな」と。

そんな想い出のアルバムの最終ページにふさわしい「有終の美」とでもいうべき光景を、今日のつりビットは見せてくれた。

最後まで素敵な夢を見させてくれてありがとう!

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つりビットは、今日<伝説>に、<永遠の一番星>になった。

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(セットリスト)

1 スタートダッシュ
2 真夏の天体観測
MC
3 A Color Summer!!
4 レモン海岸
5 裸足のマーメイド
6 Chuしたい
MC
7 Blue Ocean Fishing Cruise
8 踊ろよ、フィッシュ
9 渚でラテアート
MC
10 ウロコ雲とオリオン座
11 不思議な旅は続くのさ
12 ムーンライトキッス
13 カモメペリカンストーリー
MC
14 TOKYO WONDER GIRL
15 Piece of Cake
16 Get Ready Get a Chance
MC
17 Go! Go!! Fishing
18 釣りパーティー
19 ニガシタサカナハオオキイゾ
20 ハピハピフィッシングデート
21 寿司パラダイス(ロッドくん)
22 爆釣御礼
MC
23 旅立ちキラリ。
24 桜じゅうたん
25 ラムネ色のスケッチ
MC
26 1010〜とと〜
27 My Victory
28 プリマステラ
(アンコール)
en1 'Cause you make me happy
en2 終わらないSummer Breeze
(ダブルアンコール)
en3 真夏の天体観測