『レッド・スパロー』(2018年、アメリカ、フランシス・ローレンス監督)

1991年のソ連の瓦解とともにリアリティを失うかに見えた“スパイ映画”というジャンル。

ところがどっこい。

2010年代になっても『007』『ミッション・インポッシブル』『ジェイソン・ボーン』などのエージェント映画は大ブーム。

ジェームズ・ボンド役は時代によって変わっていくが(ダニエル・クレイグのボンド大好きdsった)、トム・クルーズマット・デイモンはもはや「当たり役」となっていて、まだまだシリーズが続く勢い。

そんな中、ともすると、チームメイトやパートナー、あるいは敵役の立場になりがちな女性の方をヒロインに据えたエージェント映画が出てきている。

ジェニファー・ローレンスによるこの『レッド・スパロー』もその一つ。

不慮の負傷によりトップバレリーナの夢を立たれた主人公が、エージェントとして暗躍する叔父の策略によって、ロシアのスパイに仕立て上げられていくという設定。


ジェニファー・ローレンスは美しくてしなやかな肉体を誇っているばかりではなく、エージェントの教育機関によってメンタルでも相手を支配する術を習得していき、ハニートラップを武器に現場に投入されていく


もちろん人間の心を持っているので、国家のための殺人マシーンとなることへの葛藤もありながら・・・

ということで、これ以上はネタバレになるので書かないでおく。

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プロットはそれなりに練られていて、どんでん返しの感覚を何回も味わえる。

「体を張った」ハニー・トラップの場面も少なくなく、年齢制限を恐れずに「大人の表現」に踏み込んでいるのも評価できる。


この作品を通じて、彼女はエージェントとしての才能を大きく開花させてしまうのであるが、この先、彼女がどこに所属して、どのような活動を続けていくのか、その辺はよく分からない。


組織に貢献するという未来なのか、組織に反逆するという未来なのか。


かりに続編ができるとすれば、「ダブルスパイ」的な役割を演じて組織に所属しつつも、最終的には利己的に自分の利益を追求する一匹狼的な感じになるのかもしれない。

そうなったら面白いな、と期待させる作品ではある。



登場人物の中にはプーチンみたいな雰囲気のエージェントが出てきたりとか、ベテランの女性教育担当が『007 ロシアより愛を込めて』の女スパイに似ているとか、ロシア系スパイ映画好きの心をくすぐる仕掛けも用意されていて楽しめる。