きっとふたりはあの時のまま〜ハコイリ♡ムスメの定期便3月号~君に出会えてよかった~(鉄戸美桜 卒業公演)

ストローハットにあなたが微笑った
きっとふたりはあの時のまま
ここにいるよね
斉藤由貴「ストローハットの夏想い」)

桜の花が美しく開き始める中、しっとりと雨の降る東京。

そんな日に鉄戸美桜の卒業公演が行われた。

まずオープニング映像で衝撃を受けた。


20180321ハコイリムスメ鉄戸美桜卒業MOVIE

「ごめんね今までだまってて 本当は彼がいたことを」という歌詞がアイドルの卒業公演に似合わないということではない。

その逆。

このムービーがあまりに鉄戸美桜の魅力を引き出していたからだ。

ムービーが終わると、メンバーがステージに登場。

秋冬の衣装の中で、鉄戸がまとっているのは真っ赤なドレス。そして花かんむり。

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内に秘める情熱を今日は全部表に出そうという意気込みのように思えた。

最初の曲は、RYUTistとのコラボユニット柳箱の「ともだち」。

南波一海率いるPENGUIN DISCのレーベルメイト同士の交流を歌い上げる曲。

自己紹介の後は、鉄戸がハコムスのカバー曲の中で最も好きな「なぜ?」、そして「約束のポニーテール」。

昼公演・特典会を終えたとは思えないほどの気力のみなぎりがメンバーから伝わってくる。

さて、と思ったところで、企画コーナーは「鉄戸被害者の会」。

この辺の緩急のつけた見せ方は、ハコムスの卒業公演のお楽しみとも言えるもの。

被害者であるメンバーが「10円玉と100円玉を交換させられた」(我妻)、「バスツアーの夜、セクシーしりとりをさせられそうになった」(星)、「鉄戸商店で無給で働かされた」(井上)、「わたしのよろしくない写真を持っている」(阿部)などと被害を訴えるも、「私は悪くない」「器が小さい」と開き直る鉄戸。

今までの公演でも見せてくれたスパイスの効いたMCをたくさん聴くことができた。

ここからは、ハコムスのオリジナル曲のブロックへ。

最初のオリジナル曲「微笑みと春のワンピース」、2枚目のオリジナル曲「レモネード・キッス」、そしてPENGUIN DISCレーベルでのファーストCDのタイトル曲「ハコいっぱいのプレゼント」。

2015年から2016年にかけて、鉄戸がリーダーを務めていた時期のハコムスのことを思い出す。楽しいこともあったけれど、大変なこともあったに違いない。それを乗り越えてきて今日のハコムスがある・・・

続いて、ハコムスのオリジナル曲の中でも失恋系のナンバー「真夏の恋のファンファーレ」と「さよならのプリエール」。

ハコムスの中で「歌姫」「失恋女王」の異名を取る鉄戸だが、彼女のボーカルが核となりながらも、この9人でのパフォーマンスが「最高到達点」だと思わせる素晴らしいもの。

特に「さよならのプリエール」は、バレエ経験者の鉄戸のしなやかなで美しいダンスが堪能できるもの。これで見納めになると思い、まばたきする間も惜しくなる。

エンディングのピアノのアウトロの音が完全に消え、拍手喝采。

そして、まさかのRYUTistの4名が私服でステージに登場。

この2曲はRYUTistもカバーしていたという話にも触れ、今日はこの卒業公演のために新潟から上京したと。

最初の「ともだち」からこの2曲というフラグがありながら全然気付くことができなかった。サプライズ。エモい。


ここからは、鉄戸を軸としたユニット曲を連続で。


ハラペコテントウムシの絆、毒舌キャラを受け継ぐ井上姫月との「日曜はダメよ」。

「歌姫」「失恋女王」を受け継ぐ星里奈との「私の靴あなたの靴」。

門前亜里の卒業をこの曲のデュエットで見送った鉄戸が、3年近い歳月を経て塩野虹に見送られる「いちご水のグラス」。

同期であり盟友であり夫婦でもある我妻桃実との「AXIA〜かなしいことり〜」。


どの曲にも意味があり、どの組み合わせにも意味があった。

ハコムスとは<物語>であり、その<物語>の登場人物たちが、その時にかけがえのない<音楽>を紡いでいく。

僕の中ではロングランのミュージカルに近いのだけれども、登場人物=メンバーの生きた群像劇の感じは、ミュージカルでは味わえないもの。

ハコムスは歴史を知れば知るほど、メンバーを知れば知るほど、味わい深いものになる。

今日の鉄戸デュエット4連発は、一つのクライマックスとでもいうべき圧巻のステージだった。


そして卒業公演の恒例であるメンバーからのお手紙とお花の贈呈。

気丈に振る舞うメンバー、泣き崩れそうなメンバー様々。

手紙を渡してハグする時に鉄戸がかける一言が、通り一遍ではなく、相手をよく見ていてしかも愛情のあるもの。

最後の我妻は「ハコイリ♡ムスメは私が守ります」と言って、安心して背中を押す言葉をかけていて、この2人の信頼関係の深さを感じさせた。

「最初のメンバーから誰が欠けても誰が増えてもハコイリ♡ムスメではなくなると思っていた」と心情を吐露した鉄戸。リーダーとして色々と苦労もあったに違いないが、今ではどのメンバーでもハコイリ♡ムスメだと思えるくらい強いグループになった。

ライブ終盤は「Like a Shooting Star」「Be My Diamond!」「なかよし」と、今の9人のハコムスが持つパフォーマンスの力を遺憾なく見せつけるナンバー。

と言っても、ハコムスの場合、決してこれ見よがしに「力で押す」ライブをすることはなくて、セトリの組み合わせ・順序がもたらす<ストーリー性でじわじわと大団円に持って行くという方が適切かもしれない。

メンバー退場後、鉄戸推しのファンからアンコールの呼び掛けがあって、場内は「みおちゃん!」「みおちゃん!」のコール。

「アンコールありがとうございますー」と再登場して「ちょっとグダッてたけどね」とユーモアを交えるところも鉄戸流。

遠く離れた旅人への想いを歌う「Moonlight Express」、そして、一人ずつ登場して揃ったメンバーが一人ずつ去って行く「ストローハットの夏想い」。

最後に一人残った鉄戸が被っていた花かんむりをステージの椅子にかけるところで暗転。

まるでミュージカル「オペラ座の怪人」のエンディングにも匹敵するような余韻を残した終わり方。


ステージでは、「ストローハットの夏想い」をピアノソロ曲にアレンジしたBGMに乗せてムービーが流れる。

17曲という壮大なライブは美しく幕を下ろした。気付けばハコムス公演史上最多曲となるプログラム。

こうして「ハコイリ♡ムスメの鉄戸美桜」の美しい姿は、フィルムの残像のように僕の目に焼き付いた。

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今でも目をつぶれば、あの時の姿が蘇る。きっと、どこかでまた会えるーそんな確信とともに。

(セットリスト)

(OPムービー「AXIA〜かなしいことり」(鉄戸))
1 ともだち
MC
2 なぜ?
3 約束のポニーテール
「鉄戸被害者の会」
4 微笑みと春のワンピース
5 レモネード・キッス
6 ハコいっぱいのプレゼント
MC
7 真夏の恋のファンファーレ
8 さよならのプリエール
RYUTist挨拶
9 日曜はダメよ(鉄戸・井上)
10 私の靴、あなたの靴(鉄戸・星)
11 いちご水のグラス(鉄戸・塩野)
12 AXIA〜かなしいことり〜(鉄戸・我妻)
お手紙
13 Like a Shooting Star
14 Be My Diamond!
15 なかよし
(アンコール)
En1 Moonlight Express
MC
En2 ストローハットの夏想い
(EDムービー「ストローハットの夏想い」Reprise(ピアノソロアレンジ))