「ブレードランナー2049」を観に行った。
あのカルト的な人気を誇る作品の続編、それも35年振り。
封切り日翌日の土曜日の昼の回に新宿ピカデリーに行くとほぼ満席。
なんだかんだ言って、映画好き、SF好きの関心を集めていて、それゆえに期待のハードルも高いと思われる。
さて、内容と感想。
ネタバレを回避しつつ書くのはなかなか難しいが、一言で言えば、続編というより同じ世界観の別の物語という方が近い。
ハリソン・フォードが出演している以上、物語は繋がっているわけだし、キャラクターの相互関係もじわじわ見えてくるのだが、そこを明確に意識せずとも鑑賞できる。むしろ意識しない方が楽しめるかもしれない。
35年の月日を経て、現実世界は21正規へと突入し、世の中はそれなりにサイバー化し、随所にディストピアな気分も蔓延しているが、そんな中で、この作品の持つ「センスオブワンダー」な要素は薄まった気がする。
一方で、映像作品におけるテクノロジーは進化し、SF映画としての完成度はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督を得て高まっている。
2時間半を超える大作ながら、描写には過不足がなく、サイバーパンクなアクションと詩的で静謐な内面描写が交互する。
「自分は何者か」を問う哲学的な主題や映像美は前作を踏襲していると評価できるのではないだろうか。
人間vsレプリカント」の「マトリックス」的な対決要素や、「親子」という「スターウォーズ」的な要素が加わり、ともすると主題が拡散しようになるところをあくまで個人の内面に留めたのが功を奏したと言える。
美術的には「マイノリティ・リポート」的なフレーバーも感じた。
前作は随所に謎を残す作品で、何度も観てるマニアが議論したり、ディレクターズカット版さらに謎を呼んだりしたが、今作は長尺の中で前半に伏線を張って、後半にどんでん返しを含めて全部回収するスタイル。
終盤にカタルシスが得られる分、解釈を論じる余地は少ない。
今が旬のライアン・ゴズリングを主演に据えることで、スクリーンに漂う雰囲気という点で甘美さは増したが、同時に「もののあはれ」的な儚さも存分に味わえる。
近未来のLAを舞台にした世界で、孤独な主人公に慰めを与えるパートナーとしてSiriを発展させたようなAI+VRの女性キャラクターが登場。
外見がカスタマイズできたり、気の利いた会話の相手になってくれたり…これが実現すると世の中はもっと平和になるんじゃないかと思った。
そんなキャラクター"ジョイ"を演じるのは、アナ・デ・アルマス。造形の美しさだけではなく、献身的な態度から滲む情け深さや切なさを感じさせる演技が良かった。
人間、アンドロイド(レプリカント)、ヴァーチャルキャラクターが織りなすドラマの中で、「存在とは何か」に思いを馳せることができる内省的な作品。
エンタテインメントというよりも、SFというよりも、ヒューマンドラマの作品としてお勧めしたい。