紛れもなく純文学の系譜ー又吉直樹『劇場』

又吉直樹『劇場』を読んだ。

f:id:SHARP:20171019231350j:plain

売れない劇作家が主人公。

人心を掴めずに仲間が離反したり、彼女の部屋に転がり込んだり、ダメな男のダメな内面をダメ文体で描く。

一体どこまで自伝的なものなのかは分からないが、リアリティを感じさせる筆致。

ストーリーに大衆性とかエンタテインメントとかいった要素は薄いが、自らの内面の暗部を描くことが日本の伝統的な私小説・純文学であるとするならば、これは紛れもなく純文学の系譜にあると思う。

芥川賞を受賞しても、変に気取ることのないところが、この作家に魅力になって来ている。

読んでいてイライラすることもあるが、それこそまさに濃い文学作品だと言えるのかもしれない。

劇場

劇場