又吉直樹『劇場』を読んだ。
売れない劇作家が主人公。
人心を掴めずに仲間が離反したり、彼女の部屋に転がり込んだり、ダメな男のダメな内面をダメ文体で描く。
一体どこまで自伝的なものなのかは分からないが、リアリティを感じさせる筆致。
ストーリーに大衆性とかエンタテインメントとかいった要素は薄いが、自らの内面の暗部を描くことが日本の伝統的な私小説・純文学であるとするならば、これは紛れもなく純文学の系譜にあると思う。
芥川賞を受賞しても、変に気取ることのないところが、この作家に魅力になって来ている。
読んでいてイライラすることもあるが、それこそまさに濃い文学作品だと言えるのかもしれない。
- 作者: 又吉直樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/09/08
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