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言葉のその先にあるもの―新海 誠『言の葉の庭』

映画 おたく

どしゃぶりでもかまわないと ずぶぬれでもかまわないと
しぶきあげるきみが 消えてく
大江千里「Rain」)

新海誠の『言の葉の庭』を観た。


モテない学生時代を過ごした経験者から見ると、思春期の男子から見た年上の女性に対するアンビバレンスな感情が痛いくらい描かれた作品。

相手に近付きたいという憧れと、自分が何者でもないという無力感の両方を往復するような感じというか。

過去の作品や『ほしのこえ』や『秒速5センチメートル』では、相手に言葉が届かないというコミュニケーション不全が作品を貫いていたが、本作のクライマックスには、相手に思いのたけをぶつけるセリフが用意されていた。

まるでどしゃぶりの雨のように…

言葉に導かれるようなドラマティックな展開があるかどうかは別にして、相手に思いを伝えることの意味を考えさせられる。まあ、こういうことができれば、きっと充実した人生を送れるんだろうね。

全体で46分と映画としてはストーリーも短め。エンディングを見ても、後日譚に思いをはせてしまうような「余白」が残っているのもこの監督ならでは。

ストーリーの方はそんな感じだが、新海誠の真骨頂である美術に関しては、雨や、緑や、空や、靴や、足などディテールへのこだわりと繊細な描写は徹底していて、実写を凌ぐような美しさ。

演技という観点では、内省的な描写を得意とする入野自由のクライマックスの独白が全部持って行った感。一方、謎めいてはいるが弱さも抱えるという年上の女性を演じた花澤香菜の抑え目の演技も光っていたと思う。

音楽は、クライマックスで秦基博大江千里の『Rain』のカバーを聞かせる。パーカッションを印象的に使っている大江千里のオリジナルよりはだいぶしっとりとした感触。映像作品のテイストにだいぶ寄り添った印象。

ということで、新海誠作品の予習も終わったので、近いうちに「君の名は。」を見に行こうと思う。


新海誠監督作品のインプレは以下の通り。

sharp.hatenablog.com


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