B級アクション映画として楽しめた―『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』を観た。

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マーベルがアベンジャーズで導入した複数ヒーロー/ヒロインが映画に同時に登場する「マーベル・シネマティック・ユニバース」の成功を横目に見て、DCも同様の群像劇システムを始めた。それがこの『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』。

バットマンの方は、クリストファー・ノーランの三部作とは別の世界線にいる設定。一方、スーパーマンの方はザック・スナイダー監督による前作『マン・オブ・スティール』の世界からの継続。

公権力とは異なるところで悪に対する「私刑」を実行するバットマンと、強大な力ゆえに力の行使が正義を体現してしまうスーパーマン

両者の価値観の対立によるものであったわけだが、作品を通じて見ると、そのような観点での諍いは少な目であったし、決定的な矛盾が生じるということもなかった。

この手のヒーローの「vs」モノ定番である「共通の敵に立ち向かう」的なアングルに収斂していくのは必然であるが、そこは分かっていてもサプライズ的なものも用意されている。

総じて、「B級アクション」と割り切ってみれば、終盤のバトル展開で得られるカタルシスはなかなか。ザック・スナイダー監督ならではの、陰影のあるスピーディーなアクションを堪能できる。

しかしながら、バットマンとスーパーマンという内省的ヒーローが並び立つことで「正義とは何か?」的な展開にも期待していたが、そこまでの掘り下げはされなかったところはやはり物足りない。

その辺の掘り下げに期待するならば、同じザック・スナイダー監督による『ウォッチメン』の方を観るべきなんだろう。あっちは娯楽作品どころではないが。

「正義」に対峙するべき存在である悪役をジェシー・アイゼンバーグが熱演しているが、頭脳明晰な割には最終的に何がしたかったのは僕にはよくわからなかった。ともすると、ジョーカーの劣化コピーのような演技で、印象も弱かったかな。その分、別の形で「悪の力」を出すことになったのだろうけど。

終盤には、明らかにシリーズ化されることが示唆されるし、この二人以外の「仲間」の存在も示される。だが、アベンジャーズ的なユーモアの要素は皆無で、「シリアスでストイックなヒーロー/ヒロインたちが黙々と敵に立ち向かう」的な作品がエンタメとしてどこまで人気を博すかは僕には疑問だった。

ということで、傑作『ダークナイト』的なものを期待すると肩透かし。点数にすると、<60点>かな。

最後に蛇足ながら。。。

アメコミ(特にDC)の予備知識があった方が楽しめる作品だが、最低でもザック・スナイダー版スーパーマンの前作『マン・オブ・スティール』は見ておかないと、諸々の設定が分からないと思う。予習必須。


(過去のザック・スナイダー監督によるアメコミ作品)

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