『オデッセイ』ー近未来版『アポロ13』

2015年の星雲賞を獲得したアンディ・ウィアーの『火星の人』の映画化。

メガフォンをとったのは『エイリアン』『プロメテウス』シリーズのリドリー・スコット

内容は、近未来のNASAが火星に有人探査に行くというミッションの中で、事故に巻き込まれて火星に取り残された男の話。

という設定だけでも、壮大な時間と空間にくらくらするわけだが、他のスコット作品と異なって、全体的に軽妙さが漂っているので見ていて陰々滅々とするようなことはない。

この軽妙さは、主演のマット・デイモンの演技力によるところが大で、「火星に一人取り残される」という絶望的なシチュエーションであっても、科学者としての知識と、使える手段を試して実践するという行動力と、決して悲観的にならないという精神の強さを、ユーモアをもって演じている。

ストーリー的には『キャスト・アウェイ』と『アポロ13』を合わせたような作品であるが、実話でもなく、かといって遠い未来のお話というような荒唐無稽さもなく、いい塩梅の「近未来作品」になっていて、リアリティがあった。

火星の地表や宇宙空間での特撮には、臨場感もあって、特にいろいろな計算をして物体の動きを制御するあたりの話は、小難しい方程式なしに、宇宙でのミッションの難しさを描いていて感心した。

この手の近未来宇宙探査ミッションは、ともするとなんだかんだ言って「NASAマンセー、アメリカマンセー」的な話になりがちなんだけれども、終盤には思わぬプレーヤーも登場。

アメリカのモンロー主義ではない宇宙開発における国際協力的な未来を期待するような描写もあった(これ以上はネタバレになるので控える)。

劇中で流れまくるのも、懐かしのディスコミュージックというかフィラデルフィアソウルで、この辺の音楽の使い方も、肩の凝らない雰囲気を加速。

決して「アカデミー賞最有力候補」とかいう傑作ではないかと思うが、肩がこらず、爽快感だけが残るSF映画として、観ておくのも悪くないと思う。日本では2016年2月公開予定。<75点>