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「リアル〜完全なる首長竜の日」

映画

綾瀬はるか佐藤健主演の「リアル〜完全なる首長竜の日」を観た。
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「リアル」とわざわざタイトルにつけているだけあって、映像世界はどこかアンリアルで、まるでつげ義春の漫画か筒井康隆幻想小説のような光景である。

筒井康隆原作のアニメ「パプリカ」のような、というべきか、実写映画で言えば「インセプション」とか「ザ・セル」というべきか。

物語は、昏睡状態の恋人の意識の中に入り込むという形で進んでいく。意識の中に入るのは医療機関の設備を通じてというところがユニーク。

セカイ系」という言葉があるけれど、本家の「セカイ系」が、主人公の精神のあり方次第で現実の世界が変わっていくというものであるのに対して、この映画の方は、最初から精神世界の中での物語。だから、逆セカイ系というべきかもしれないし、あるいは、究極のセカイ系なのかもしれない。

ここでは、途中で叙述トリックめいた軽いどんでん返しがあるものの、基本的には喪失と恢復の物語が進んでいく。

肝心なのは、物語の内容ではない。そうではなく、物語を、本人と愛する人が紡いでいくという共同作業自体が重要なのだ。

ここには神も仏も登場しない。だが、そこにこそ、日本人が大事にしている価値観が現れている。それは、大切な人に見守られたいということ。

何がリアルかなんて関係なく、たとえ空虚なものであっても、親しい人と心を通い合わせると感じることができればそれはきっと幸せなんだろう、そう思わされる作品。

アラを探せば、ストーリーの陳腐さとか、映像の安っぽさとか、確かに高い評価を与える人は少ないだろうという作品ではあるが、日本的な、あまりに日本的な価値観をここに見ることができるという点で、一見の価値はあると思った。「もっと早く見るべきだったか?」と言われたら、答はNOだけれども

主演の綾瀬はるか佐藤健はスクリーンをさっぱりと美しいカップルを好演。編集者のオダギリジョーや医師の中谷美紀の存在感はさすが。中谷美紀は存在感があり過ぎて、何か腹黒い動機を秘めているのではないかと深読みさせてしまうくらいだったが、いずれにしても良い女優になったと改めて思わされた。