トラとともに漂流して生死の境をさまよう映画「ライフ・オブ・パイ」を観た。
予告編で説教くささを感じて見に行かなかったのだが、今回観て感じたのは、やはり宗教的な説教をちりばめた映画であると。つまり「自らが存在することを肯定し、神に感謝せよ」と。碇シンジか、お前は。おめでとう!と。
まるでエヴァンゲリオンの悪いところを拡大したような作品だと思う。つまり、果てし無くセカイ系。まあ、孤独に漂流していれば、自分の精神世界と外界が直結して神を「感じる」というのは理解できるけれども、それを映画にされても、という感じ。
この作品でも、トラの名前が「リチャード・パーカー」だったり、楽園なのか地獄なのかわからないような無人島が出て来たり、挙句の果てには、漂流していたのが動物と一緒なのか人間と一緒なのか真実は誰にもわからないと言ってみたり…
総じて1990年代的なこけおどし感が凄い。映像の美しさに目を奪われる場面もあるが、基本的には、「謎が謎を呼ぶ」展開で解釈を視聴者に委ね、エンディングでも「信じるか信じないかはあなた次第」って言われた日には、拍子抜けするにも程が有る。
ネット上には様々な「解釈」があふれているが、エヴァンゲリオンのブームのときと同じ感想しか抱けない。つまり「釣られているな」と。
こんな風に思ってしまう僕は、もう心の汚れた大人以外の何者でもないのだろうけど、これを「何が真相か」とか「フィクションかノンフィクションか」とか大真面目に考察したり議論したりする方が滑稽だ。
これは宗教的な寓話なのだから。それ以上でも以下でもない。
ディテールを検証するなんて、ある意味でトンデモだと思う。真剣に観た人とか感動した人もいるだろうから酷評はしたくないがが、僕にとっては作り手のこけおどしばかりが目に余る映画だった。
もちろん、宗教でしか解決できない悩みを抱えている人にとっては、何らかの啓示や救いをもたらすきっかけになる可能性は否定できない。それならそれで素晴らしいことだと思うけれども。
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