博士こそが影のヒーローー「ロボコップ2014」

古典をリメイクすると、オールドファンが酷評するのが世の常だが、ジョゼ・パジーリャ監督がリメイクした「ロボコップ」はどうか。


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手短に言えば、メカはよりかっこ良く、主人公はより人間的に、善悪の図式はシンプルになり、バトルシーンはまるで最新のゲームのようにエキサイティングになった。

たとえば、メカは宇宙刑事ギャバンのコンバットスーツをオマージュした直線基調のものから、かなり有機的でエルゴでモダンなデザインになった。バイクもカッコイイ。ややバットマン的なテイストを入れているが、いまの基準でフィギュアを買うならこっちだろう。

また、主人公には奥さんと息子がいて、記憶も失われない。原作では、社会的に葬られて孤独になってアイデンティティさえも失うという「GUNSLINGER GIRL」状態だったのと比べると、だいぶいい境遇だ。異形の者になった悲しみはあるけれども、自分が何者かがわからない不安はない。

悪役ということでは、前作は警察権力と癒着した利権企業という図式でボスキャラが登場した。「雇い主には発砲できない」というプログラムが、あたかもキカイダーの良心回路のように主人公を拘束するのだが、今回は悪役も小粒で、プログラムもシンプルでちょっと物足りない。

ただし、その分バトルシーンは痛快で、ここは技術の進歩を感じさせる。一人で大勢を相手に戦うシーンは、まるで覚醒したニュータイプのような無双っぷり。レベルアップしたキャラクターでよくできたバトルゲームをプレイしていているような爽快感を味わえる。

だが、一つ疑問が残るのは、「ロボコップ」ってこんな単純な話だったっけ?ということ。

人間と機械の間で、自らの存在の矛盾に苦しむシーンはほぼ皆無。原作はラストでそれを見出して、一言セリフを吐くところで最大のカタルシスが得られるが、今回はややモヤモヤしている。続編の匂いだけはプンプンするのに(笑)

ということで、悩める主人公こそ「ロボコップ」の醍醐味と思う向きにはやや物足りないが、その足りない穴は、ロボコップの生みの親である博士を演じるゲーリー・オールドマンがしっかりと埋めてくれる。彼が倫理と正義の間で苦悩する姿にこそ、「ロボコップ」という作品の魂が現れている。肝心な場面での行動も。実は博士こそが影のヒーローだと思う。って言うか、僕がゲーリー・オールドマン好きなんだけど(笑)

この博士の存在に免じて、合格点の出せるリメイクになったと思う。以上、オールドファンの辛口評。ってか、自分が老害にならないように気をつけよう…