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ランウェイを出でよ、街に出よう ー『ファッションは魔法』

「音楽は魔法ではない 音楽は魔法ではない 音楽は魔法ではない 音楽は魔法ではない でも音楽は…」(大森靖子

『ファッションは魔法』は、「writtenafterwards」の山縣良和と「mikio sakabe」の坂部三樹郎の共著。

「ファッション」は特権階級のものではない。「ファッション」にルールはない。だが、大量生産・大量消費のファストファッションではつまらない。もっと自由に、もっと個性的にることで「ファッション」はもっと生々しくなれる。

文中では、バンドじゃないもん!、きゃりーぱみゅぱみゅ、でんぱ組inc.、Chim↑Pomなどとのコラボレーションが語られる。

特に坂部がでんぱ組inc.と行ったコラボについては、「2.5次元」を目指すために、発砲スチロールでかつらを作ったことや、そのままユニクロマクドナルドに入ろうとしたら断られたことが披露されていて面白かった。

坂部はこう語る。

僕の作る服は一貫して日本的なものにこだわっているように思います。漫画やアニメ、アイドルやロリコンなど、日本のサブカルチャーに対する趣味はないけれど、興味はある。その表層的な軽さとか周縁的な距離感とか突発的な爆発力がファッションに通じると思っているんです。世間から偏見の目で見られ、社会的にどうにか押さえ込もうとしてもどんどん広がっていってしまう文化。そこから生まれるエネルギーは理屈では捉えきれない、まさに魔法のような力です。その力をファッションによって掴み取りエモーショナルに表現する、というのが僕のスタイルかなと思っています。(p.107)

「魔法が使えないなら死にたい」と大森靖子は言ったが、山縣良和と坂部三樹郎こそが魔法使いなのかもしれない。

僕らがそう思うのは、坂部の言葉を借りて言えば「もしかしたら世界の人々の装いを新たに変えるものが出てくるかもしれない」という期待を、ファッションが与えてくれるからに他ならない。

山縣の言葉では「僕たちは自らの切実な感覚がなぜか他人にも通じる奇跡のような瞬間を探していきたい」と。これは、文学や、音楽や、絵画や写真など、他の芸術作品の創作に携わるアーティストに共通した想いだろう。

既存のシステムに依存せず、過去のプロトコルから自由になることで、ファッションは新たな領域を拡大できるし、その絶えることのない拡大への挑戦こそが、ファッションの本質なんだろうと思う。本書は、そんな視座を与えてくれる。

ファッションは魔法 (ideaink 〈アイデアインク〉)

ファッションは魔法 (ideaink 〈アイデアインク〉)