ジェンダーを軽く飛び越える―志村貴子『娘の家出(1)』

志村貴子の新作『娘の家出(1)』を読んだ。


冒頭からジェンダーとか社会規範とか、そういうものを軽く飛び越えている。

「恋愛って、異性を好きになることとは限らない」―

放浪息子」とか「青い花」にも通じる志村貴子ワールド。

「自分が何者か」を探す過程で、ジェンダーの規範に縛られていることに気付く人もいるだろうが、そういう人に対して、志村貴子の目は温かく、筆は優しい。

女子高生数名がオムニバス形式で主人公をなす。最初は「ガールズジャンプ2012」での読み切りから始まり、「ジャンプ改」での集中掲載を経て、本格連載に至った経緯からこの形式になったよう。

去年まで「青い花」の連載されていた「マンガ・エロティクス・エフ太田出版)」は、7月発売号をもって休刊になる。いま「志村先生の作品が読めるのはジャンプだけ」だ。

個人の印象としては、全体的にちょっと集英社らしいカラーになっていて、従来の志村作品と比べると、だいぶ分かりやすく、読みやすい方向になっている。それでも繊細なタッチと、想像力を刺激する行間は健在。

主人公が複数いるオムニバスということで、作品に奥行と広がりが加わっている。この先の展開が楽しみ。