この公演でしか作れない時間をードロシー「STARTING OVER」ツアー盛岡

王道を歩みながらも、マンネリに陥らないこと―

口で言うのは簡単でも実践するのは難しい。

特にドロシーのように確固たる世界観のできているアーティストの場合には、最初に「見せたい世界、聴かせたい世界」がある。まして、今回の「STARTING OVER」のように伝えたいストーリーがある場合には、そのセトリの流れは自ずから決まってくる。その中で全部で8回のツアーを、どうやってマンネリにならずに、完成度を高めていくかー

ということで、今日は、ドロシーの全国ツアー3日目の盛岡。

富永美杜は、前日のブログでこのように想いを綴った。

明日は盛岡公演!!
盛岡公演もみなさんと一緒に楽しいライブを作れるように!!
一つ一つのライブが大切です(^^)

その公演でしか作れない時間を作れるように頑張ります!!

そう。基本形となるセトリの流れはあっても、一つ一つのライブはかけがえのないもの。細かな曲の入れ替え、MCのテーマ、ステージの演出。会場の雰囲気も違うだろう。同じライブは二度とない。それこそが「ライブ」の意味。

盛岡でのワンマンは初。新潟よりも広いライブハウスは一杯。女性限定エリアに多くの女性の姿が見える。

「ストーリー」が序曲となって、「ドロシーの世界一周夏物語」で楽しい世界に漕ぎ出すのは、今回のツアーの王道。

そこから、MCの自己紹介を挟んで、いきなり「COLD BULE」で暗く深い樹海に迷い込む。暗転。続いて、「臨戦態勢が止まらない」へ。今回ツアー初披露だが、違和感のない展開、どころか痺れるような格好良さ。スムーズに「My Darling」へ。

MCで白戸佳奈がアルバムのオリコンウィークリー9位のお礼を述べる。会場から温かい拍手。盛岡の会場の雰囲気は、なんだか大きく包むようなところがある。

そして前半の山場となる「STARTING OVER」。今日も高橋麻里の歌声は切なく響く。曲が終わったところでふと隣の女性限定エリアを見ると、泣いている人やいまにも泣き出しそうな人が。まるで孤独の淵に落ちそうなくらいに。歌でこんな風に人の心を揺さぶることができる高橋麻里のボーカリストとしての表現力は抜群だ。

そして、ここから救い出してくれるのが、今回のドロシーのツアーの醍醐味。

「set yourself free」を入れることで相手の存在を肯定する姿勢がはっきりとし、そこで友に寄り添う「明日は晴れるよ」へ。ふと横を見ると、先ほどの女性達はみな笑顔になって聴いていた。もちろん僕自身も。「世界で一番大好きなあなたをそっと見てる」なんて歌われた日には、ね。

そこから、宮城と同じく東日本大震災で大きな傷を負った岩手の人に向けて「Life goes on」が炸裂。ドロシーのメンバーの笑顔が、生きる希望を与えてくれる。そんな気にさせるパフォーマンス。

ここでMC。リーダーの白戸佳奈より「岩手と言えば何でしょう?」とネタ振り。秋元瑠海が「小岩井牧場!」と反応、早坂香味が「冷麺」、高橋麻里が「わんこそば」。みんな食べ物ばかりで微笑ましい。と思ってみていたら、早坂が「岩手さん!」と。一瞬、「?」となったが「岩手山」のことだと分かり、会場は温かい雰囲気に包まれる。こうみんナイス。

では「岩手山」と言えばということで、今日のお題は「山に登るときに一つだけ持っていけれるとしたら何?」というお題を残して、白戸、高橋の先輩コンビと秋元の3人が着替えのために退場。

残されれた富永、早坂の二人組。富永いわく「真面目チーム」ということだが、何とか面白い答をしようとひねり出したのが「デジカメ(早坂)」、「キャンプセット(富永)」。このキャンプセットを「一つだけなんだけど、なんでもついてる」とドヤ顏で言った時のみもりは、まるで四次元ポケットからひみつ道具を取り出したときのドラえもんのようだった(あ、みもえもんか。。。)

「こんな答じゃ白戸先輩に叱られるー」と言ってるところに、着替え終わった3人が登場し、白戸先輩が富永を楽屋に呼び出してお説教するような掛け合いが。それを高橋麻里が身体で隠して「良い子のみんなは見ちゃダメー!」って。会場爆笑。

声を大にして言うけど、いまのドロシーはMCも面白い。

さて「山に一つだけ持っていくもの」というお題に、秋元瑠海は「メガホン」で、大きな声を出せるのでやまびこも聴けるし、遭難したときにも助けを求められると。白戸からはすかさず「Two Wayね」というコメント。リーダー全然叱らないじゃん。むしろ優しい。そんな白戸の答は「氷砂糖」で体力回復に効くと。高橋は「角砂糖」で偶然にも似たような答となった。

5人が新しい衣装に着替えたところでライブもいよいよ後半へ。

楽しくて明るい世界をみせてくれる「colorful life」「青い空」「恋をしてるの きっと」という王道セトリの後、「みなさーん、盛り上がってますかー?!」の煽りが入る。

これが、ライブのクライマックスが始まる号砲だ。「HAPPY DAYS」「nerve」「未来への虹」「恋は走りだした」「2 the sky」「CLAP!CLAP!CLAP!」の怒涛のノンストップ6連発。「HAPPY DAYS」は今回のツアー初だが、ここに入ることでセトリにさらに磨きがかかった感じ。

特に「恋は走りだした」は、ライブでキラーチューンとしてはいまや「nerve」や「未来への虹」を上回るようほどの存在に育った。メインボーカルの秋元瑠海の成長が大きいのだが、楽曲の素晴らしさと、立体感のある振り付けも効いている。僕も今日初めて連結する振りコピを体験! これがめちゃくちゃ楽しかった。またやりたい!

「CLAP!CLAP!CLAP!」では観客が一斉にジャンプするパートもあり、忘れがたい一体感。今回のドロシーのツアーの終盤のセトリ、高揚感が半端ない。これはやみつきになる。特に観客を煽りながらも自らも楽しんでいる富永美杜の表情の輝きが眩しい。彼女の昨日のブログに書いていた「一つ一つのライブが大事です」とはこういうことかと思い知る。

最後に、余韻を残すような形で「永遠になれ」を。「時は戻らないから 想いを強く強く 結んでいつか 永遠になれ」の歌詞を聴きながら僕も思う。このライブが終わらなければいいのにと。

アンコールは「Over There」をしっとりと聴かせ、盛岡にまた来たいとMCの後「ジャンプ!」で完全燃焼。

興奮さめやらぬ会場ではBGMの「ストーリー」に合わせて、手拍子やコール、それいに続いて「あと一回!あと一回!」とダブルアンコールを求める声がやまない。

この歓声に応える格好でメンバー全員がカーテンコールのように登場し、肉声でお礼の挨拶。この流れも定着してきた。

メンバーが深々とお辞儀をしている間に観客の方も自然発生的に前の方から座って行く。後ろの観客席からステージがよく見えるようにと。長いお辞儀から頭を上げたメンバーは、この光景を見て、驚いたような、嬉しいような表情を見せ、ステージから降りて行った。

ということで、月並みな言葉しか見つからないが、今夜のドロシー盛岡公演は素晴らしかった。

王道の流れをしっかりと維持して、観客が望むドロシーの世界を見せながらも、要所要所では、思わず「おお!」と声が漏れるような、いい意味で期待を裏切るような小変更をセトリに施している。

これこそがツアーで各地を回るときの醍醐味の一つだろう。同じライブは二度とない。「アルバムの曲順にこだわる」ドロシーのことだから、細かな曲の変更にもちゃんと意味があるはずで、それを想像するだけで楽しいのだが、そんなことを気にせずとも、十分に楽しいライブだった。

特典会では全員に感想を伝えることができた。こんな贅沢、いつまで続くか分からないけど、ともかく僕はこのドロシーの全国ツアーを楽しんでいる。ライブはもちろんだけど、土地土地の美味しいものを食べたり、いろいろな乗り物に乗ったりすることを。こんなに全国ツアーが楽しいなんて知らなかった。4月27日の東京に向けて、毎日がHAPPY DAYSな感じ。

さて、次の公演は3月29日広島、3月30日松山の予定。次の移動は船に乗ることになりそうで、それも楽しみだ。

(セットリスト)

ストーリー
ドロシーの世界一周夏物語
COLD BLUE
臨戦態勢が止まらない
My Darling
STARTING OVER
set yourself free
明日は晴れるよ
Life goes on
colorful life
青い空
恋をしてるの きっと
HAPPY DAYS
nerve
未来への虹
恋は走りだした
2 the sky
CLAP!CLAP!CLAP!
永遠になれ
(アンコール)
Over There
ジャンプ!

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