彼女たちは「明日」になったードロシー「STARTING OVER」ツアー仙台

2011年3月16日、ドロシーリトルハッピーはデビューしたが、直前に起こった東日本大震災のためデビューイベントはなくなり、CDの流通もままならなかった。

あの日からちょうど3年後の今日、ドロシーは、地元仙台の日立システムズホールを全国ツアーの初日の会場に選んだ。その想いは明らかだ。3年間の成果を見せること。他でもないここ仙台で。他でもないこの3/16に。特に東北の人に対して、「あの日」からのドロシーの成長は、きっと希望そのものになる。

満席近くになったホールは、地元ならではの温かさに包まれている。まだ小学生くらいの女の子を連れた家族の姿も目立つ。

出囃子が始まるとホールが歓声に包まれる。幕にはメンバーのシルエットが、まるでアートワークのように逆光に浮かび上がる。

幕が落ち、紺色のシンプルな衣装に身を包んだメンバーが現れると、もう待ちかねたような大歓声を受けて、最初の曲「ストーリー」が始まる。

この曲は「序曲」だ。

「これからドロシーのストーリーを見せます」という。

リーダーの白戸佳奈は、今日のTwitterで「ドロシーのストーリーを見に来てください」と呼び掛けた。そう、僕らは今日、ドロシーのストーリーを見にここに来たんだ。

続いて、「ドロシーの世界一周夏物語」。

さあ。ドロシーの世界の始まり。いろいろな国の言葉が出てくるこの曲は、デビュー前のドロシーーが大きな世界に飛び出そうとする意気込みを歌った曲に聞こえる。

続いて、メンバーの自己紹介。いつもと同じで気負いは感じられない。この晴れ舞台でいつも通りでいられることをむしろ凄いと思う。

ここから世界は一変する。突然。何の予告もなく。まるで3.11のあの日のように。

楽曲的にはロック色が強くなり、歌詞的には内面に入り込むような雰囲気に。「COLD BLUE」「壊れちゃう 崩れちゃう」「My Darling」を一気に。クールなドロシーを見せつけた。ドロシーのこの格好良さは、インストアイベントではなかなか伝わりにくい。大きなステージと照明があると、ぐっと引き立つ。舞台が大きければ大きいほど、ドロシーも大きく見える。だから、ドロシーのパフォーマンスを堪能するには、大きいステージを観るのが一番。今夜のこのホールのように。

一連の内省的な楽曲は、失恋の痛手を歌った「STARTING OVER」で頂点に達する。いや、むしろ、最底辺に達する、というべきかもしれない。

ここで、ドロシーは、救いの手を差し伸べる。

失意に落ち込む友を慰める「明日は晴れるよ」で、彼女は寄り添うことで力になろうとする。

ここが 、このライブの転換点だ。暗く落ち込んだ世界に区切りを付けて、前に進もうと。

前向きに生きることを歌った「Life goes on」が力強く始まる。

ふと見ると、前方の小学生の女子達が、一生懸命振り付けを真似ながら、大きな口を開けて歌っている。

サビの「私達を止められるものは私達だけ もう大抵のことは大丈夫 強くならなきゃね さよならした大切な人も忘れないよ 消えてしまった星の分まで私達は生きていくの」を大合唱する地元の少女達。ドロシーの存在自体が、この仙台で希望になっているのを見た瞬間だった。

そして、インディーズのデビュー曲「ジャンプ!」を歌って、衣装替え兼MCタイム。

最初は、高橋麻里と富永美杜が残って3年間の思い出を語る。高橋はデビュー後に青森のインストアライブに行ったときの思い出を。最初は3人しか観客がいなくて驚いたけど、歌いおえたところでみんなが笑顔になったと。それで「歌を届けるのに人数は関係ない」と思ったと総括。富永の方は、2011年のTIFに出演したときに、「デモサヨナラ」の「オレモー!」コールが徐々に広がって感動したとのエピソード。

ここで選手交代。着替え終えた白戸佳奈、秋元瑠海、早坂香美が入れ違いに登場。白系の新衣装だが、ドロシーのシンプルなテイストはそのままに、カラフルなパーツが入り、ちょっとアイドルっぽい雰囲気。

3年間の思い出を聞かれた秋元は「東京に行って東京タワーを見たり、いろんな新しいものを観れたんですが、今度は初めて広島にも行くので、これからも新しいものをもっと見たいです」と安定の天然トーク。白戸先輩に「それって心に残ったことじゃなくない?」と突っ込まれる。早坂は、国際派らしく、ドロシーで海外に行ったことが印象的で、外国の言葉で応援されたのに感激したと。最後に白戸佳奈が「私は、去年のTIFで…」と語り始めたが、ここで高橋と富永が登場。「続きはブログで」となった。

全員揃っての新しい衣装。ワンポイントとして、白戸がイエロー、高橋がピンク、秋元がオレンジ、富永が水色、早坂がグリーンの色をまとっていて、実にカラフル。まるでアイドルのように。

ここから怒涛の後半戦の始まりだ。

まずは「colorful life」。色とりどりの衣装を身につけたドロシーが踊る姿は、この曲によく似合っていた。続けて、何の予告もなく初公開の「青い空」へ。もともと心が洗われるような良曲だが、生で聴くとかなり希望を持てる味わいだった。

夢を見るような時間がさらに続く。甘口の「恋をしてるの きっと」「どこか連れていって」から始まり、「nerve」「未来への虹」「恋は走りだした」の怒涛の三連発。ここでの会場の湧き方半端ない。総立ちから、「指にも触れない」の軽いモッシュ(ただし座席の中で)や、左右への民族大移動やら、左右に連結してのフリコピやら、ドロシーの音楽の振幅すごい。この「沸くドロシー」が大好きな人も多そう。僕もだけど。

さて、ドロシーのストーリーはいよいよ終幕へ。「2 the sky」から「CLAP! CLAP! CLAP!」へ。

だが、楽しい時間はもう終わりを迎えている。

ということで、最後は、この楽しい時間がずっと続くようにとの想いを込めて「永遠になれ」を。

イントロからして、まるで鎮魂歌のように聞こえてくる。

「君にも見せたい 輝いてるこの世界」

この「永遠になれ」の歌詞にあるように、きっと、この光景を見たくても見られない人がいる。なかには、件の震災でこの世を去ってしまって見られない人もいるだろう。そんな人にも捧げられたドロシーからの贈り物なんだろう。

ここでドロシー退場。アンコールを求める声が「ドロシー!ドロシー!」と館内にこだまする。ドロシーのテーマカラーの緑色のサイリウムをいっせいに振り始める観客。場内はもう緑色の海だ。

再びステージに現れ、この光景に見とれるドロシーのメンバー。感激して涙ぐむ秋元瑠海。

「Over There」から、デビュー曲として紹介された「デモサヨナラ」へ。会場一丸となって絶叫する「オレモー!」の一体感。素晴らしい光景。また秋元が泣きはじめる。それを見て僕ももらい泣き。本当にいいライブだ。

永遠に続いて欲しいくらいのライブ。デモサヨナラ。そんな締めくくりのメッセージを受け取った。

その後、ダブルアンコールを求める声も止まなかったが、最後にメンバー全員でカーテンコールで登場し、白戸佳奈がマイクを通さない肉声で挨拶。その姿の力強く美しいこと。

かつて「Life goes on」で「私達が明日になる!」と決意を歌った5人の少女たちは、間違いなく、今夜、この仙台のステージで「明日」になった。そして、僕ら観客は、その出来事の目撃者になった。

ドロシーの全国ツアーは今日始まったばかり。4/27の東京でのファイナルまで、僕も一緒に駆け抜けたい。こんな凄い輝きを見せられたからには、ね。


(セットリスト)

ストーリー
ドロシーの世界一周夏物語 
COLD BLUE
壊れちゃう 崩れちゃう
My Darling
STARTING OVER
明日は晴れるよ
Life goes on
ジャンプ!
colorful life
青い空
恋をしてるの きっと
どこか連れていって
nerve
未来への虹
恋は走りだしたー
2 the sky
CLAP! CLAP! CLAP!
永遠になれ
(アンコール)
Over There
デモサヨナラ

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