「流れゆく庭ーあるいは方舟」@赤坂レッドシアター初日

ワンツーワークスの「流れゆく庭ーあるいは方舟」を観に赤坂レッドシアターに行った。本日が初日公演。

豪雨から洪水に至る状況で、危機管理のできない行政と、批判しながらも無力なマスコミをやや戯画的に描く作品。胃が痛くなるような展開が続き、観ていてやりきれない気持になる。まるで「これは天災なのか、それとも人災なのか」と問われているよう。あるいは「あなたも、こんな人災を起こす可能性があるのではないか」と言われているような気分。

未曾有の状況に上手に対処できず、どんどん悪化する災害に翻弄される人々。相互に怒鳴り合うことしかできなくなる展開にややうんざりしながらも、俳優の体を張った演技はなかなかだった。特に、終盤に向けて豪雨や濁流を表現するあたりは、過酷とも言える演出になっていて、役者根性に頭が下がる思いだった。

しかしながら、作品自体、「災害に翻弄される役所とマスコミ」というテーマが主眼になっていて、必ずしも個々の人物が深みをもって描き切れてない。ありがちな組織批判や日本人論に見えてしまうのは残念なところ。

作・演出の古城十忍は、大学卒業後、新聞社勤務を経て、演劇界に飛び込んだ経歴の持ち主。ジャーナリストとして持つべき批判的視点はその経歴の賜物だろうが、演劇の場合、そのようなものの見方がドラマを強くするとは限らず、また、必ずしも鑑賞するものの共感を生むとは限らない、と感じた。

ちなみに、初演は2008年。パンフレットには、「東日本大震災を予言」と書いてあったが、全部通して見ても、あまり関連があるようには思えなかった。むしろ、見る目を曇らせるような文句かと思う。これは個人の感じ方かもしれないけど。

最後に設備について一言。赤坂レッドシアターの椅子はクッション性が低く、すぐに腰が痛くなって、劇の時間が長く感じた。TPD定期公演のシブゲキのシートがいかに快適だったか、今更ながら思い知った。