東京パフォーマンスドール(TPD)PLAY×LIVE「1×0」Episode2@シブゲキ

どんなに握手をしたって あの子とはキッスとか できないのよ ざんね~ん!
Negicco『アイドルばかり聴かないで』)

ざんね~ん!なことは分かっていても、握手するために、チェキを撮るために、覚えられるために、アイドルの現場に足を運び、CDを積み、声援を送っている。自分の好きなユニットが、音楽ランキングの上位に入ったり、TVに出たり、大きな会場でワンマンライブを開催する日を夢に見ながら。

東京パフォーマンスドール(TPD)のスタイルは、そのような現在のアイドルシーンの標準的な方法論に対して、オルタナティブ(別のありかた)を提示するものになっている。

・観覧は全席指定
・CD販売なし
・握手会なし
・チェキ撮影なし(ガチャで当選した場合のみ)

騒いだり、接触したり、認知されたりを求める層のニーズには合わないが、一方で、着席してじっくりとパフォーマンスを堪能したい層のニーズには合う可能性がある。もちろんたいていの人は両極端のどちらかにいるというよりは、両方のどこかの間、自分にとって快適な均衡点を求めるということだと思う。

ということで、前置きが長くなったが、PLAY×LIVE「1×0」Episode2を観てきた。

結論から言えば、これはアイドルライブというよりは、小劇場の演劇に近かった。今のアイドルシーンにあってはオルタナティブではあるものの、中途半端なところもあると感じられ、夢中になるには至らなかった。

良かったところから言えば、歌とダンスに磨きをかけた女の子がキラキラしているところはTPDの最大の魅力。正規メンバーの9人はもちろんバックダンサーのTPD DASH!!まで粒ぞろいだった。ほとんど予備知識なく行ったが、帰りにはメンバーのクリアファイルを2枚買ってしまった(小林晏夕、橘 二葉)。そして、ダンスと歌のクオリティが高いこと。

逆に物足りなかったのは、全体として統一感があまりないところ。演劇パートの脚本と演出は、完全に小劇場の演劇の雰囲気で、これはこれで面白いものの、音楽パートとの並列で置かれるほどかと言われると正直言ってそうでもない。音楽は楽曲のアレンジや音響の面で中途半端さを感じさせた。美術はプロジェクションマッピングなど新しい技術をつぎ込んでいるが、全体として新しさを感じるに至らなかった。

結局のところ、タレントとして良い素材を集めたところで「何かを伝えたい」「何かを見せたい」という強い意思、別の言葉を選べば「作家性」というようなものがなければ、鑑賞している方には響かない。

特に、接触や認知を排している分、純粋なパフォーマンスとして何をどこまで魅せてくれるかというハードルは上がる。

TPDの公演には「いまここ」というアウラは存在したものの、「一回性」という緊張感はやや希薄であった。「劇場での定期公演」というスタイルでそのような緊張感をどう維持していくのかは、パフォーマーの責任というよりも、運営の方で工夫するべき課題だろうと思う。

今回のEpisode2の続きとして、Episode3,4,5を用意しているのが運営側の答なのかもしれないが、個人的には、総合芸術として「演劇、音楽、ダンス」といった全体を貫くストーリー性や作家性が希薄という印象で、この先の展開が僕を夢中にしてくれるという確信は持てなかった。

ということで、自分にとっては、TPDのステージは響くものがあまりなく、オルタナティブにもならなかった。あくまで個人の感じ方だけれども。