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もしも僕に時を止める能力があったなら―『フローズン・タイム』

時よ止まれ、お前は美しい!
私の地上の日々の痕跡は
永劫へと滅びはしない
その幸せの予感のうちに
今味わうぞ、この至高の瞬間を
(ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテファウスト』)

時を止めることができたら、僕は何をするだろうか。

好きな女性を前にしてそんな妄想をすることもあるけれど、それを映画にしたのがこの作品。監督のショーン・エリスは、ファッションフォトグラファーのキャリアを経て映画の世界に足を踏み入れただけあって、映像はとても美しい。そして、美大生の主人公に自身を重ねていると思われるが、女性の美しさに対する尊敬の念がきちんと描かれている。

ギャグやお色気をフレーバーに入れながら、ストーリーの核心はしっかりとしたラブストーリーになっている。アメリカの監督だとコテコテになってしまいそうなところを、イングランドならではの皮肉と奥ゆかしさが効いていて、実に品のいい作品に仕上がっている(ただし、それなりに裸体が出てくるので、鑑賞にあたってTPOの注意は必要)。

視聴した後の印象は『エターナル・サンシャイン』に近い。普通ではありえなそうな設定、どこにでもありそうな傷心、主人公がヒロインを思い続ける純愛など。時間を置いてまた見返したくなる類の作品。

原作のショートフィルムは、アカデミー賞のショートフィルム部門にノミネートされた。アイデアの勝利のような作品に思われるが、ストーリーと映像がきちんとついてきているだけでなく、俳優陣が誰もかれも実に素晴らしい演技を見せてくれているのがポイントだと思う。