かつて吉田美奈子は歌った。「夢でもし逢えたら 素敵なことね」と。だが、今夜、吉澤嘉代子は叫んだ。「夢で逢えたってしょうがないでしょう!」と。
夢で逢えれば素敵というのは、ストイックではあるけれども、どこかに自己欺瞞がある。理性ではそういう風に自分を納得させようとしていても、身体は騙されてくれない。吉澤嘉代子の楽曲には、そのような身体性がストレートに表現されている。
ライブの幕開け。吉澤嘉代子がステージに登場。カラフルなワンピース。まず「ラブラブ」を歌い終えると、なんだか不思議なMCへ。MCじゃなくて、録音したトークが流れるのだ。これは、いまここが吉澤嘉代子の夢の中だという設定だかららしい。夢の中にお邪魔します。
続いて「ひゅー」から「チョベリグ」、そして「恥ずかしい」へ。これは名曲。そして、透明感を保ったまま綺麗に裏返る声が魅力。聴いているだけで気分が良くなってくる。
そこから「涙のイヤリング」「化粧落とし」「ひゅるリメンバー」「らりるれりん」と展開。楽しい曲、しっとりした曲、浮き上がる曲、沈み込む曲。吉澤嘉代子の表現の幅の広さに改めて驚かされる。
ここでゲストのおおはた雄一が登場。「ぶらんこ乗り」をしっとりと幻想的に。これは忘れがたい余韻を残す。
そして「シーラカンス通り」「がらんどう」「氷砂糖」を経て、バラードの名曲「泣き虫ジュゴン」へ。バラードで、メロディラインも綺麗だが、歌詞も心に刺さるものばかり。これは聴いているだけで涙がにじんでくる。
「ストッキング」に続いて、彼女のレパートリーで最も盛り上がりそうな「未成年の主張」へ。これで最後の曲。なのに、MCが録音のままだ、と思っていたら…「夢で逢えたってしょうがないでしょう!」のシャウトと同時にキャラチェンジ。
彼女の声や歌は誰にも似ていない。
アンコールは、魔女の姿に着替えて「東京絶景」そして、なんかラジオっぽい企画「らりるれ理論」で会場を和ませつつ、手拍子をスマートに求める「美少女」へ。
吉澤嘉代子は平成生まれなのに、楽曲にはなんかノスタルジィを感じる部分がある。そこがなんか面白い。
最後にダブルアンコール。今年大学を卒業して、いま23歳、23歳という年齢は特別な意味があると思うというようなMCに続いて、2日前にできたばかりの新曲「23歳」を歌う。ステージに一人で弾き語り。これまた名曲。良かった。
とにかく、吉澤嘉代子がギターを弾きながら、所狭しとステージを動き回る姿は相当に眩しかった。それに彼女は声が素晴らしい。歌っている声も澄んでいて聴いていて気持ちいいし、話している声も落ち着いているように聞こえるが、どうしようもなくかわいいい。
これがファーストワンマンとは信じられない才能と力量。持っている世界観も独特で、その世界をオーディエンスに見せよう、伝えようとするこだわりが凄い。ちなみに、今日の演奏はバンドメンバーで以下のような感じ。演奏もほぼ完ぺき。やっぱり生演奏はやめられない。
Vocal, A.Guitar: 吉澤嘉代子
E.guitar: 石崎光(cafelon)
E.Bass: 酒井由里絵(ex チュール)
Keybords: 西池達也
Drums: 張替智広(キンモクセイ, HALIFANIE)Guest:おおはた雄一