「バカとロミオとジュリエット(再)」@シアターサンモール

N.I.Produce × 劇団FREE SIZE「「バカとロミオとジュリエット(再)」を観に、新宿1丁目のシアターサンモールまで足を運んだ。ちょっと長いタイトルだが、「バカとテストと召喚獣」を「バカテス」と略すのにならえば、「バカロミ」と呼ぶべきか。

18日の初日はほぼ満員。

ストーリーは、劇中劇から始まる。台詞はシェークスピアなのだが、ジャージ姿で本を読んでいる役者たち。そう、これは稽古風景なのだ。

ロミオを演じる客演のイケメン俳優(鷲尾修斗)の型破りな演技に対して、「ロミオはそういうんじゃない」と口を出さずにはいられない役者バカの主人公(真佐夫)。「じゃあ、おまえはロミオを知っているのか」と反論されて議論した後、突然、天に召されてしまう。

そんな彼の前に現れたのは、白い衣裳に身を包み、頭に輪っかを付けた神様(古野あきほ)。見るからに頼りなげで、いい加減そうな神様はこう言う。「生き返ること以外の願いをかなえてあげる」と。

神様に「早く決めてね」と急かされる役者バカは、思わず「シェイクスピアに会いたい」と願ってします。時間を遡る二人は、中世ヨーロッパへ。そこで目にするのは、キャピュレット家とモンタギュー家が仲良く遊んでいる光景。そして、小説なんか全然書いていないシェイクスピアの姿だった。

「このままではあの悲劇の名作が生まれない!」と歴史を改変しようとする役者バカは、シェイクスピアを連れて、ロミオとジュリエットの二人を引き合わせようとする。

まずモンタギュー家の中で一番無心になって遊びに興じているメンバーから事情を聞こうとするが、その人こそロミオ(なすび)だった。

とにもかくにも段取りを付けようと、続いて、ジュリエットを探しにいく役者バカ。たどりついたキャピュレット家の窓辺に呼び出したジュリエット上原歩)は、身だしなみがだらしなく、言葉遣いも粗雑。原作とのあまりの違いにショックを受ける役者バカ。

「果たして彼はロミオとジュリエットを結び付けることができるのだろうか」、とここから先は劇場で観てのお楽しみ。

誰もが知っている悲劇を下敷きにして喜劇を作り出していく明るい舞台。随所で笑わされるだけでなく、最後まで観ると「俺はシェークスピアを知っているのだろうか」「歴史で自明とされていることは真実なんだろうか」と考えさせられる。

ストーリーがよくできているのは当然だが、重要な役を演じるなすびの存在感が凄かった。人一倍目立つ体躯に、キレのある動き、そして反射神経の研ぎ澄まされた芝居。TV番組でコミカルな役を見せることが多いが、あくまで彼の本分は役者にある、と再認識。

また、どことなく頼りないけど悪い人(神)じゃないという神様を演じる古野あきほの輝きは半端なかった。17歳という設定だったが、童顔で小柄という持ち味を生かしていて全然違和感なし。マジ天使、っていうか、マジ神様。この人を間近で観れたというだけでも、足を運んだ価値があったと思わされた。

ちなみに、油彩画家の三嶋哲也さんも自分と同じ初日の回を観劇していた。ブグローマニアという三嶋さんの嗜好からして、古野あきほを観に来ていたに違いないと確信し、またしてもシンパシー。

「バカとロミオとジュリエット(再)」は20日が最終日。まだチケットあるということで、これはお勧め。