2020東京―オリンピック開催は復興の具体的な姿を僕たちに見せてくれる

東京にオリンピックを呼ぶというのは、石原慎太郎・前都知事の執念だった。だが、その執念を実らせたのは、猪瀬直樹都知事であった。

そして、アベノミクスで金融緩和、財政出動、成長戦略を進めようとしている安倍晋三首相にとっても具体的なゴールイメージを得たことになる。デフレ脱却の本質は、人々の将来期待を変えることだ。この点で「オリンピックを開催する」という強烈なイメージは、多くの人の期待をポジティブな方向に変えるだろう。

一人の都民として、石原の掲げた施策の大半には納得が行かなかったが、この「東京オリンピック」だけは別だった。スポーツはやるのは苦手だし、見るのもあまり興味がない。観客で街がごった返すのを想像するだけで気が滅入るという気さえする。

だが、これらのネガティブな気分を全部帳消しにするくらいの効果がオリンピック開催にはある。老朽化したインフラの更改、頓挫した再開発への再挑戦、そして世界の頂点を演出するイベントの企画。

フクシマがこんなに大変なときに何がオリンピックか」という意見もあるが、逆だ。フクシマも大変、震災復興も大変、だからこそオリンピック、なのだ。あと7年、いや6年で、東京が新しく生まれ変わらねばならない。東京を変えるためには、福島も東北も一体のパッケージとしてデザインしなくてはならない。どのような電力供給システムを整えるのか。どのような交通手段を整えるのか。それなくしては、完成などしない。オリンピックの開催は、復興の具体的な姿を僕たちに見せてくれる。

とりあえず都知事にはお疲れさまといいたい。招致合戦をめぐっては失言、というか、アメリカの反日メディアの罠にはまったこともあったが、よく克服したと思う。

そして、安倍首相はやはり「持ってる」と言わざるを得ない。政権交代を挟んで総理に返り咲くだけの人物だと思う。この機会をとらえてアベノミクスの完成形に期待する。もちろん、経済だけでなく、文化のアピールを世界に向けて行う最高の機会だ。間違いのないようにしてほしい。

誘致にあたって最終段階で浮上した汚染水の処理は懸案だが、これこそ日本の科学技術の粋を集めて、イェーガーを作り、密封したものをマリアナ海溝の底に沈めに行くというプランはダメだろうか。その頃には、芦田愛菜菊地凛子くらいに成長しているかもしれないが。いずれにしても太平洋の浅瀬から放出するよりも影響は小さくて済みそうだ。いや、これが後の「KAIJU」の生まれた原因になるとか言われそうだけれども。

与太話はともかく、2020年まで生きていられたら、そのときも東京に住んでいたいと思う。でも、仕事していて観戦どころじゃないかもしれないな。日本人は真面目だから。