マッチョなアメリカー『インディペンデンス・デイ』

先週の金曜ロードショーは『インディペンデンス・デイ』だった。ジャンルとしては「宇宙戦争もの」に分類されるであろうこの作品で出てくるアメリカがあまりにマッチョなので笑ってしまった。とりあえず挙げてみる。

  • 宇宙人は侵略者。イナゴのように人類に害を与える存在。駆逐すべき。
  • アメリカは世界のリーダー。地球の平和を守るために各国の力を集める。
  • 黒人も黄色人種も一緒に戦おう。でも、リーダーは軍でも活躍していた優秀で勇敢な白人。
  • 7月4日はアメリカの建国記念日。そして、地球が一つになって立ち上がる日。

異文化に不寛容なアメリカ。自らの正義を疑いもしない、実に能天気なアメリカ。9.11後には政治的に許されないようなマッチョさ。いや、9.11の直後の集団ヒステリーを思わせるマッチョさというべきか。

映画の公開は、9.11より5年遡る1996年。冷戦終了で軍事的なライバルのソ連が消滅し、バブル崩壊で経済的なライバルの日本が存在感を失ったあの頃。確かに、アメリカは全能感に満ちていたのだろう。誇大妄想狂の一歩手前くらいの。そんな空気が満ち満ちている映画。

イラク撤退やリーマンショックを経て、自らを相対化するようになってきたアメリカ人が、ある種のノスタルジィとしてこの映画を観たくなるのは理解できる。続編も作られるようだし。だが、21世紀の日本でこの映画をわざわざTVで放送するというのは一体どういう了見なんだろう。

同じ「宇宙戦争もの」でも、異文化に寄り添うような『第9地区』は、21世紀らしい、いやゼロ年代らしい価値観を含んでいると思う。が、TV屋の尺度である「視聴率」という点では厳しいのだろうと推察。しかし、『インディペンデンス・デイ』のような米国の戦意高揚作品の視聴率が良くなるのだとすれば、なんとも感性の鈍い視聴者が多いものだと言わざるを得ない。これでは、日本の意識のインディペンデンス・デイ(独立記念日)はまだまだ遠い。そう思う。