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打ちのめされる喪失感―新海誠『ほしのこえ』

クラクラきた。

新海誠のショートフィルム『ほしのこえ』を観た。僕と彼女の距離はどんどん離れていく。メールが届くのに8年もかかるほどに。もうこの事実だけでクラクラする。名状しがたい恐怖に襲われる。

彼女は15歳。巨大ロボットに乗って、太陽系の外にどんどん出ていく。ワープを繰り返して。人類の敵である謎の異星人と戦闘するために。なぜか制服のまま。

このように、「僕と君の二人の関係」と「人類の危機」という二つのレベルがほとんど中間層を挟まないところから、この作品は、『最終兵器彼女』や『イリヤの空、UFOの夏』とともに「三大セカイ系」と言われる。

だが、『ほしのこえ』は他の「セカイ系」作品と異なっている。主人公には、内面の葛藤がなく、外部への主体的な働きかけもない。

彼にあるのは、受動的な諦念。そして「それでも彼女を想う」という一途な気持ち。それだけ。「好きだけど、一方的に離れていくものはどうしようもない」というのが、『ほしのこえ』のエッセンス。これはきつい。映像の美しい作品であることは間違いないが、再見するには相当心の強さが必要だ。

後の『秒速5センチメートル』でも、「いくら好きでも離れていくものは取り戻せない」というテーマは変わらない。この打ちのめされるような喪失感。これこそが新海誠の原点であり、真骨頂なんだろう。

ほしのこえ(サービスプライス版) [DVD]

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