有終の美―『スタートレックVI 未知の世界』

1986年 ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発4号機が試験中に爆発
1987年 ソ連のゴルバチョフ書記長がアメリカのレーガン大統領とレイキャビークで直接会談
1989年 ベルリンの壁が崩壊
1990年 東西ドイツ統一
1991年 ワルシャワ条約機構廃止、ソ連崩壊

これは20世紀史の最後を飾る「東西冷戦時代の終焉」だ。

スタートレックVI 未知の世界』がアメリカで封切られたのは、1991年12月6日。まさに「雪融け」の雰囲気を色濃く反映した作品になっている。

時は23世紀。惑星連邦の宿敵クリンゴンの月プラクシスが大爆発し、その半分以上が吹き飛んだ。これによりクリンゴンの大気は汚染され、あと50年で惑星は滅びてしまう。そこでクリンゴン帝国宰相ゴルゴンは惑星連邦に講和の申し入れをしてきた。

「ゴルゴン」と「ゴルバチョフ」の近似は意図的なものだろう。そして、この「講和」の申し入れから、一波乱あり、カーク達は絶対絶命の危機を迎えるのだが…

ネタバレ回避のため詳細は省くが、シリーズ最終作にふさわしい壮大な展開と感動的なラスト。前作で見劣りした特撮技術も本作ではレベルアップ。俳優陣ももはや老いを隠せないが、引き換えに獲得した円熟味と安定感を遺憾なく発揮。

「異文化への理解」というテーマは、何も9.11以後の専売特許ではない。自らを中心と考えて傲慢になることを止め、互いに相手の文化を理解することで相互不信を回避し、憎しみの連鎖を断ち切ることで、より大きな世界の平和を実現できる。この作品は、現在において再評価されるべきものだと思う。

カーク船長らしい終盤のシーンも見もの。まさに『スター・トレック』シリーズとして有終の美を飾る作品。

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