貴婦人と一角獣展@国立新美術館

奇跡のような展示。パリのクリュニー中世美術館の至宝でほぼ門外不出と思われていた「貴婦人と一角獣」のタピスリーが日本に来ているのだから。

公式サイト:貴婦人と一角獣展 | 国立新美術館(東京・六本木):2013年4月24日(水)〜7月15日(月・祝) | 国立国際美術館(大阪・中之島):2013年7月27日(土)〜10月20日(日)

「貴婦人と一角獣」は、1500年頃に制作されたとみられる6面の連作タピスリー。全長は22メートルにも及ぶ大作。

6面のテーマは、これまでの研究によれば、触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚という人間の5つの感覚を表現しているそうだ。なるほど言われてみれば確かにそう見える。

残る一つの最も大きなタピスリーは「我が唯一の望み」と題されている。五感を統べる心、知性、精神であるとの説もあるし、愛や結婚といった意味だという説もある。今回の展覧会のキービジュアルにも採用されていてもっとも荘厳な雰囲気をまとった作品だと思う。

f:id:SHARP:20130512081814j:plain

これまで、フランスの外に出たのは40年近く前にメトロポリタン美術館に貸し出した一度きりということ。今回はクリュニー中世美術館の改装のタイミングで日本への貸し出しが実現したということだ。そして、美術館の改装に先立って、タピスリーにも補修がされている模様。

確かに、昨年、パリで鑑賞したときとくらべると、赤が鮮やかになっているような感じがする。補修の成果なのか、国立新美術館の先進的なライティングの貢献によるものか、いずれかは分からないけれども。

今回来ているの約40点と少ない印象もあるが、クリュニー美術館の目玉である「貴婦人と一角獣」6点がすべて日本に来るというのはおそらく絶後であろうから、もうこれだけで十分見ごたえのある展覧会だと思う。作品に登場するモチーフや、動物、植物に関しては、別室での映像作品とパネル展示で詳細に解説されていて、本国で見たとき以上に理解を深めることができた。

音声ガイドは池田昌子池田秀一。このキャスティングは「ユニコーン」つながりで、シャア、いや、フル・フロンタルなんだろうけど。あの落ち着いた声で「貴婦人が鷹に餌を与えている」などと解説されてしまうと、ついうっとりとしてしまう。「いや、鷹じゃないんじゃないんですか?」というツッコミは別にして。いずれにしても、この謎めいた作品をじっくりと堪能するには、音声ガイドは有益であった。

館内を一周して他の作品を鑑賞した後、また「貴婦人と一角獣」のスペースに戻って来られるショートカットあり。この動線は実に鑑賞者に優しいものになっている。

いまなら比較的空いていてお勧め。西欧近代の名画ファンにはピンと来ないかしれないが、中世好きなら必見の展示。