マンガ・エロティクス・エフが「今日マチ子のエロス」を大特集したのが2010年11月だからもう1年半前になる。その号の表紙にもなった『U』が連載を終えて単行本化された。
公式紹介は以下の通り。
◆「あなたを殺したい」
―――人間の力を超え、コピーロボットの中に宿り始める独自の意志。今日マチ子が描く、初めてのエロティック・SF・ホラー!◆大学の研究室でクローン技術の研究をするユウは、 引っ込み思案で、恋愛も片思いどまりの冴えない女子大生。“理想の自分"をつくるため、ついに実験で自分のコピーロボットをつくりだし、奇妙な友情で結ばれる。しかしコピーは次第に独自の意志を持ち、殺意が芽生えてゆく。これは避けられないことなのか――。
まず何より「今日マチ子」と「エロス」という組み合わせに意表を突かれる。しかしながら、過大な期待は禁物。確かにエロエフらしいアダルトな雰囲気を纏っているが、絵のタッチもストーリーもどちらかといえばさっぱりとしたもの。
ただし「SF・ホラー」という側面ではとても強いインパクトを持っている。コピー人間(のようんもの)は、これまでもいろいろな作品で描かれているけれども、その悲しさを表現したものの中では群を抜くのではないかと思う。「ブレードランナー」のアンドロイドも印象に残る存在であったが、あの悲しさを彷彿とさせる。
もし、自分がコピーであったら、やはり自分がオリジナルになりたいと切望するだろうし、そのためにオリジナルを殺そうと思うのも自然な帰結であろう。しかし、オリジナルとコピーとが錯綜する世界では、誰が誰のために誰を殺そうとするのか、人間同士よりも情念の渦巻く状況を生み出すのではないか。
僕らの生きている21世紀初頭は、iPS細胞の研究がノーベル賞を受賞し、コンピューターの将棋プログラムがプロ棋士を負かす時代である。そう思うと、この『U』で描かれているのは、決して荒唐無稽な空想の世界ではなく、近いうちに実現しそうな世界ではないかと思わさせる。いや、もしかしたら、この地球のどこかでは秘密裡にこのような事件が起きているのかもしれない。
- 作者: 今日マチ子
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2013/04/18
- メディア: コミック
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